B.I.G.JOE『監獄ラッパー』現代社会で共存するための教訓を享受する

名作が生まれた背景を知るために

 

2003年、香港からオーストラリアへ2.8kgのヘロインを密輸した疑いで拘束され、6年の懲役を言い渡されたB.I.G.JOE

この『監獄ラッパー』は事件の一部始終から6年後の釈放・ステージへの復活までの期間を事細かく綴っています。

服役中の生活や心境については日記を元に書かれているため、リアルな感情が残されています。

そのリアルタイムで芽生えた感情や思想をB.I.G.JOEは刑務所に居ながら音源に残しています。

その方法は電話音声を録音したり、無理くり直したカセットテープで録音したりと、その時の音源と服役前に録った音源を合わせて制作したのが『THE LOST DOPE』です。

 

『THE LOST DOPE』   

 

音質としては最低の環境だと思いますが、刑務所という環境下で持たざる者が持てるものだけを駆使しクリエイトする。

それはブロンクスというゲットー地区で持たざる者が集まり街頭の電源を使ってパーティーを行ったHIPHOPの起源に繋がる精神だと思います。

『THE LOST DOPE』の「DOPE」は麻薬というスラングとラッパーとしての生きざまのDOPEが失われた、刑務所にいるラッパーの立ち位置を表現しています。

 

この電話は他でもなく盗聴されているが ソウルまでは奪えやしないさ…

B.I.G.JOE – THE LOST DOPE

 

そして、このアルバムに収録されている『Midnight Express』は刑務所という閉鎖的な環境にいる人間が作ったとは考えられないほど、大規模で美しい地球の営みを描写しています。

 

▼『Midnight Express』のレビュー記事はこちら

B.I.G. JOE 最高の情景描写と幾重にも重ねた思考『Midnight Express』

 

服役3年を迎えた頃、B.I.G.JOEはレコーディングスタジオがある刑務所に移送になったことで3枚の作品を制作しています。

 

『Universal Truth』   

B.I.G.JOEが所属するグループMIC JACK PRODUCTIONの作品です。

『Universal Truth』は「普遍的真理 」という意味です 。ジェイルでの生活や仲間との会話のなかで発見したさまざまなことを 、シンプルな言葉で表現したアルバムらしいです。

 

『2 WAY STREET』   

『2 WAY STREET』は刑務所で出会ったブラック ・アメリカンの相棒と「B.I.G JOE-N-EL SADIQ」名義で発売した作品です。

どこまでラッパ ーとしての道を突き進められるかを語り合い 、それをテ ーマにしたらしいです。

 

『COME CLEAN』   

 

『COME CLEAN』は 「告白・白状する」というような意味で、刑務所に入るまでの課程 、そのなかの悲惨さ 、孤独さなどを表現しています。

 

この4枚の作品は、獄中で内省的思考を繰り返したリリック、人生観・死生観を考え抜いて書かれたリリックです。

そのリリックが生み出された背景、リアルタイムの心境、様々な人間関係をこの本で知ることができます。

 

 

10の戒め

 

音源を深く理解するための活用以外にもこの本は多くの気づきを与えてくれます。

刑務所という分かりやすい弱肉強食・閉鎖的空間において巧く生き抜く「10の戒め」は勿論、現代社会でも通用する利口な生き方を学べます。

1つ 、 「自分の運命を受け入れろ 」
2つ 、 「看守には絶対歯向かうべからず 」
3つ 、 「システム側と癒着するべからず 」
4つ 、 「他人にリスペクトを払え 」
5つ 、 「他人に期待しすぎるべからず 」
6つ 、 「無駄に群れるべからず 」
7つ 、 「敵を作るべからず 」
8つ 、 「約束は必ず守れ 。できない約束はするべからず 」
9つ 、 「外の世界の問題に首を突っ込むな 」
1 0 、 「何を見たとしても口をつぐめ 」

「自分の運命を受け入れろ 」というのは刑務所という過酷な状況においても、無いものねだりせず自分のやるべき事を見定め、ひたむきさに取り組めば報われることを4枚の作品が証明しています。

 

出所の瞬間

 

6年間刑務所で過ごした人間が外の世界に出る瞬間…

常人では想像つかない程の喜びと感動があるでしょう。

この本ではB.I.G.JOEというリリシストならではの素晴らしい情景描写がふんだんにあり、中でも出所時の描写は文字が嬉々として、当たり前に感じる世界の至る所の美しさは隠れていると教えられます。

まだ夕陽が高く最高に晴れわたるシドニ ーの空を 、とても清々しい気分で仰いだ 。

僕は無言のまま新しい世界を感じとっていた 。鉄条網も 、手錠もない世界だった 。

西日がこれでもかというほど眩しく 、風はとても気持ち良く優しかった 。途中にシドニ ー海岸も見えた 。

夕暮れの通りをジョギングしている人々 、公園で遊ぶ子供たち 、カラフルな色のさまざまな車、立ち並ぶ家々 。

窓の外はもう夢にまで見たフリーダムの世界だった 。

 

まとめ

 

『監獄ラッパー』はB.I.G.JOEというラッパー・作品のバックボーンを知ることも、現代社会で共存するための教訓を享受することもできる一冊です。

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。