ラップは主観的に表現するものが多数ですが、今回取り上げる楽曲は客観的視点としても珍しい「モノ目線」で描いた日本語ラップを集めました。
般若 – カメラ
『おはよう日本』や『やっちゃった』など、般若の初期作品には代表的なストーリーテリング曲がありますが、『カメラ』ではタバコ屋の上のカメラ目線で都会の人々の暮らしを描写しています。
オレはカメラ タバコ屋の上のカメラ
只一日を写してるだけだ
カメラ 仕掛けたのは誰か
見ては見られる何の為だ
般若 – ケータイ
人間と一番密接なモノ『ケータイ』目線の楽曲です。
その密接さから、持ち主のことを全て把握している所が面白いです。
逆パカに怯える様子が時代を感じますね。
「や行」に入ってる会社の山田
ウソだよ本当の名前は紗耶香
歳は22 一昨年入社
声出せないけどこの際言うが
堕ろさせてるぜ 去年の4月
えっ・・・嘘でしょ? マジ? 今ソコ開く?
あのバカ忘れてる 例の写メが
女の勘ってな鋭いワケだ
奥さん 頼む オレは悪くない
折らないで ねえ 折らな・・・
LITTLE – Mr.COMPACT
アーティストが心血を注いで作るCD(Compact Disc)目線のストーリーを綴った楽曲。
万引きしてまでも聴いてほしいという思いの強さが伝わります。
金がないなら友達から借りなアテがないならしこたま働きな 食費削りな 断食しなそれでもだめならば万引きしな 聴いてほしいのさ そんぐらいにおれの全てを込めたソングライティン
再生や体験を経る程に傷が増えていくが、持ち主とCDが共に苦難を乗り越えていく様子が表現されています。
わりと傷つく外見や内面
さらに痛みを増す大変な体験
乗り越えまた来年再来年
ずっとおれらはマイメンさ
そして、ラストヴァースでは持ち主が成長し、その純粋な忠誠心が報われなくなる様子が描かれており『トイストーリー』のような切ない曲になっています。ちなみにProdはKREVAです。
Blumio – タンスの中の不人気者
持ち主への純粋な忠誠心から生まれる物語を描いた『トイストーリー』的な楽曲がもう一つ、Blumioの『タンスの中の不人気者』です。
この曲は、リスナーのコメントを元に制作されました。
Blumioのストーリー構成や描写が素晴らしく、映画や絵本を見たような気分になります。
「タンスの中の不人気者」
今晩アップしまーーす!
楽しみにしててねー! pic.twitter.com/eIP1ICgdbX
— Blumio / ブルーミオ (@Blumiojp) October 9, 2020
小林勝行 – オレヲダキシメロ
俺は黒いペン
ただ単 自分のツレ
白紙の上で 黒になって
命をけずる
この曲は、黒いペン目線で小林勝行というラッパーが病気と戦う様子、曲を制作する苦悩を描写しています。
ラッパーとペン、命を削って作品を残す姿が重なります。
生きることや制作することの苦悩をモノ目線にすることでより鮮明になっており、ヒシヒシと熱量が伝わってきます。
モノ目線で自身を描写するという斬新な楽曲です。
K DUB SHINE – 天下の回りモン
Yo’名前万札ケチなやつ
背中にタトゥー キジ2つ
あとNIPPON GINKOと入れた腹
茶系の着物で地味な柄
一万円目線で世の中の汚いお金の流れや、都会の欲を描写しています。
K DUB SHINEらしい東京の社会性を現した楽曲になっています。
OZROSAURUS – いちまんえん
こちらも一万円目線で裏社会を描いた楽曲です。
俺は旅してる一万円 コントロールしてるの誰?
誰もが 欲しいのはリーガルドラッグ MONEY
コントロールして笑え 笑え
ゆとり FUN GROOVE – ひとりぼっちコンドーム
コンドーム目線…
まとめ
今回の記事でラッパーのストーリーを組み立てる手腕や、物事を捉える視点の面白さを知ることが出来ました。