「例ノゲートノ 通行料」とは?
RHYMESTER『ザ・グレート・アマチュアリズム』の宇多丸ヴァースにこのような一節がある。
「ネェ 社長サン遊ンデカナイ? モチボッタクルヨ デモ損デハナイヨ」
「例ノゲートノ 通行料ヨリハ マトモデショ? 言ワバ授業料」
カタコト客引きにぼったくられるより酷い「例ノゲートノ 通行料」とは?
「例のゲート」はレーベルゲートCD
例のゲートとは「レーベルゲートCD」を指しています。
「レーベルゲートCD」とは、パソコンでのリッピングやコピーを防止する目的で開発された「コピーコントロールCD」にソニー・ミュージックエンターテイメント(SME)独自の規格を取り入れたディスク媒体です。
その概要は、レーベルゲートCDをパソコンで再生する場合、専用ソフト「MAGIQLIP」が必要。
インターネットでの個別認証後、ハードディスクへのコピーが可能。
1回目のコピーは無料、2回目以降は定められたライセンス価格が発生するという、なんとも難儀な仕組みです。
こんなシステムに必死にお金をかけるより他の使い方あるだろに…
“例ノゲートノ 通行料ヨリハ マトモデショ?”
というリリックにも納得です。
「ネェ 社長サン」はソニーの社長
「ネェ 社長サン」というリリックはソニーの社長のことを指しているとインタビューで語っており、レーベルゲートCDで発売することを不服に思っている事が伺えます。
RHYMESTER レーベルゲートCDでの発売作品
RHYMESTERは当時、ソニー・ミュージックエンターテイメント内のレーベル「NeOSITE」よりシングル『現金に体を張れ』『ザ・グレート・アマチュアリズム』『WELCOME2WYROOM』でレーベルゲートCDを発売している。
『現金に体を張れ』は2003年7月に発売し、2004年7月にレーベルゲートCDで再販されている。
これらのシングルを収録したアルバム『グレイゾーン』もレーベルゲートCDとして発売されました。
『ザ・グレート・アマチュアリズム』のシングルを発売する際、宇多丸はCD-EXTRA形式でリリースすればレーベルゲートを回避できると考えていたが、結局ダメだったと上述のインタビューで語っています。
CD-EXTRA形式
一枚のCDにオーディオ用データとパソコン用データを共存させているマルチセッションCD。
音楽CDの余剰部分を利用して特典の映像や画像を収録する場合が多く、1996年から2000年代初頭にかけて製造されていた。
SOUL SCREAM『緑の森』というシングルは、パソコンで読み込むと『(エンハンスド)事件簿』のPVを観ることができる。
時代背景
コピーコントロールCDが登場した時代背景として、2000年代にパソコンやインターネットの普及によりCD-Rへのコピー、Winny等ファイル共有ソフトを使った違法アップロードが増加していた。
これらがCD売り上げの減少に起因していると考え、オーディオ機器では再生できるがパソコン(CDドライブ)での読み取りを制限する規格として開発されました。
オーディオ機器での再生不具合や音質低下など、様々な指摘がありました。
なにより読み取り機器によってはコピー抑制機能が働かなかないという大きな問題がありました。
そこにiPodの台頭もありデータの取り込みを制限する方針には限界があったと思います。
エイベックスは2002年にコピーコントロールCDを導入しましたが、2004年には緩和を始め段階的に撤退していきました。
結果的にコピーコントロールCDの導入はCD売り上げ低下の歯止めになりませんでした。
まとめ
2000年代初頭に数年間だけ存在したコピーコントロールCD、レーベルゲートCDについて取り上げました。
今の若い世代に伝わらないリリックの内容ですが、逆にそれこそ時代背景をリアルに反映するHIPHOPの醍醐味とも言えます。
同じ時代に問題視されていたCD-Rへのコピー、海賊版問題について歌った曲もありますので併せて聴けば時代背景を知ることができます。
GEEK『無賃乗車』
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