R-指定さんがNHK-FM『ミュージックライン』にゲスト出演した際に、アルバム「よふかしのうた」とペットボトルと低級霊について語りました。
以下、R-指定 → R 南波志帆 → 南
グレートジャーニーについて
南:何か、無条件に気分が高揚して全力でワクワクしました。生き様がかっこよくて。
R:ありがとうございます。
ライブで日々全国津々浦々回ってるみたいな歌なんでねー。
南:人生楽しそうです、素敵だなぁーって。
R:確かに人生悩むことあるんすけど、結果多分ね、人生楽しいですね。
俺は楽しんでる部類だと思います。
南:エンジョイしてるんですね。
R:こんな好きな事やらしてもらって、エンジョイしてなかったら逆にダメかなと思いますね。
南:いい方ですね。
R:いい方ではない(笑)
南:いいお人だ。
R:ほんま思ってます?(笑)
全然、全然。
ちゃんとしんどい時はしんどい顔するし、ちゃんと忙しすぎたら文句言うタイプではあります。全然いいあれじゃないですよ。
南:でもいい人だぁー。
南:「グレートジャーニー」はCreepy Nutsの過去と現在が分かるようなリリックでした。
R:そうですね。
まさかあそこで噛むとわな
まさかあの歌詞飛ばすとわな
南:という部分が気になったんですけど、実際に反省や振り返りの時間って持つようにしてるんですか?
R:持ちますね。この曲の時系列的に、一番で目覚ましてライブ行って、ライブの終盤に差し掛かるところで、この歌詞が出てくるんですけども。
ライブ中とかにも秒速で反省しながらやってたりするんですよ。
南:早いですね。
R:普通に喋ってる時に「今これ言葉のチョイス間違えた」なんて考えながら喋ったり歌ってたりしてますよ。
あと、 MC で盛り上げよーと思ってMCした言葉とかが「あ間違えた」とか、なんかちょっと面白いこと言おうとしたのに「無茶苦茶スベったなぁ」とか、逆に「盛り上がった」とか思いながらライブやってます。
南:スベったなぁって自覚したらめっちゃへこみません?
R:めっちゃへこみます。
南:じゃあへこみながらも?
R:そうっすね。へこみながらもへこんでない顔しながらやるっていう。
南:あぁ、頑張ってます。
R:頑張ってます!(笑)
南:勝手に百戦錬磨のイメージがあったので、ミスとかもあるんですか?
R:めちゃめちゃありますね。
多分ミスらないことはないと思ってるんで。
やっぱライブとか生ものやし、特にヒップホップとかラップなんてのは、その場その場で起こったりすることの方が大事だったりするんで。
練習してきたことをも大事ですけど、そこで百戦錬磨っていうか先輩たちを見ると、いかに百戦錬くぐってきたかっていう先輩より、いかに負けてきたかっていう先輩の方が学ぶこと多いですね。
南:へぇー。
R:自分もそうやと思うし、百選練磨という表現が正しいのかわかんないですけど。
大阪のラッパーの先輩とかも「俺はもう万戦錬磨やから」みたいなんで。
ずっといろんな現場で勝ち続けてきた歴史よりも、いろんな現場でミスったり負けたり力及ばなかったりっていう経験が逆にその人達の足場になってたりする事あるんで。
南:へぇー。
R:僕もそうですねほんまに。
ライブやるたびに「あかんかったなぁ」とかいけたなと思っても「もうちょっとあれやったかなぁ」みたいに思ったりはしますね。
南:いい話ですね。
R:でもあれすよ、すごい謙虚に自分を振り返ってるみたい言ってますけど、めちゃめちゃ手応えあった時はもう、相方の松永とめちゃくちゃ手応えあった話をしますから。
南:仲いいですね(笑)
R:そうですね(笑)
南:「グレートジャーニー」で過去を振り返る部分では、仲良しのDJ松永さんとの出会いも書かれております。
18歳の時に知り合ったそうなんですが、当時の印象って覚えてますか?
R:僕、地元大阪で松永が新潟なんですけど。
大阪でまた別のラップグループを組んでたんですよ。
そのラップグループ組んでた奴が大阪でイベント開こうって、当時の同世代20歳になる前ぐらいの東京のラッパー、 DJ やったり沖縄、福岡、新潟から全国の同世代を集めたイベントをやったんです大阪で。
そん時に新潟から松永さんが来て、初対面は曲の中でも言ってるけど、ハット被って短パンとサンダルやったんですよね。
なんか変な格好してるし目立つじゃないですか。
当時ってあんまりヒップホップがそこまでメジャーな文化でもなかったし、アンダーグラウンドに一回すごい潜った時期だったんです。僕らが10代の時って。
キングギドラとかKICKとかRIP SLYMEが出てきた2000年代前半は1回ヒップホップが全国にバッと市民権を得かけたんですけど、そこからまたどんどんブームが収束していって、アンダーグラウンド化が進んだその一番地下に潜ってる時期ぐらいに僕らが10代やったんで。
だから全国から同世代集めても不良しか来ないんですよほんまに。
もう沖縄から無茶苦茶ガタイいい奴来て、福岡からは何か一番怖い感じの細い不良きて、東京からは2 mぐらいの金髪のやつが来て、うわぁ!とか思ってたら、新潟からなんかひょろひょろした短パンとサンダルが来たから、「こいつ雑魚そうやな」と思って。
南:あはは(笑)
R:友達なれそうやなみたいな。
大阪も結構、不良じゃなくてペンギン村的な和気あいあいした奴らやったんで。
各地からくる街の顔役みたいな奴らが集まってくるのに恐れてたんですけど、新潟から松永が来たから「おいでおいで」ってすぐ仲良くなりましたね。
南:最初の印象が雑魚そうってめっちゃウケますね。
R:あいつも同じで「雑魚そう」って思って友達になったそうですから。
ユニット結成のきっかけ
南:そこからどういうきっかけでユニットを一緒にやろうってなったんですか?
R:そっから普通に友達の時期が続くんですよ。
結構18から4〜5年ぐらいはただの友達みたいな。
友達なんすけど「一緒に曲作ってみる?」みたい言ってたりとか、一緒に遊んだりとかの機会が増えてて、なんか友達以上ユニット未満みたいな期間が続いて、俺のソロで DJ してもらったりとか、松永さんのソロのアルバムに俺が客演でラップ入れたりとか。
そういうのがあって、そんなに劇的なあれじゃなく、普通に松永さんも上京してたんで先に。
俺は大阪住んでたけど東京でライブあって遊んでる時に、新宿の路地裏のゲーセンの前で「そういえば一緒にやってみます?」みたいどっちからともなく言い出してそれでやりだしたみたいな。
南:じゃあ自然の流れで結ばれたという。
R:結ばれたって言うとちょっと気持ち悪いんですけど(笑)
あんま劇的なエピソードないんで、毎回松永と「どうする?」って作戦立ててるんですけど。
まだその脚本ができてないんで、出来上がり次第そっちに変更すると思います。
南:楽しみにしてます(笑)
ラップを始めたきっかけ
南:ではもっと過去に戻りまして、R-指定さんがラップに出会ったのはいつ頃ですか?
R:僕は中学校1年生の時にラップと出会ったというか、好きになりました。
それまで触れてはいたんですよ当然。
それこそ日本語ラップが世に広がった時代に僕が小学生とかの時代やったんで。
正直、音楽にあまり関心がまだなかったんですね。
おとんの車の中で聞いてたおとんの時代の音楽とか、おとんが好きな中島みゆきさんとか、サザンオールスターズとかを聞いてて俺も大好きになって。
逆にいとこの姉ちゃんが聞かせてくれる、いとこの姉ちゃん時代のを聞かされてもなんか、通ぶってたんで僕「若いやつの音楽わからへんわ」とか小学生のくせに言ってたんですよ。
南:なかなかっすねー。
R:めっちゃ痛いですけど言ってて、ラップっていうのも KICK THE CAN CREW とかも聞いて耳には入ってきてたけど、それがKICKやと認識してなかったりとか。
ちゃんとそれがラップであるって認識したのが SOUL’d OUTっていうグループで。
中学生の時に家族で外食してる時に、そのお店でSOUL’d OUTさんの曲が流れててかっこいいと思って。
SOUL’d OUTさん自体英語を多用するんで、何言ってるか分からんけど、とにかく耳が気持ちいいなと。
それで CD を買ってみようと思ってチェックしだして、 CD ショップの日本語ラップコーナーみたいな所にとりあえず行って。
これがこないだごはん屋さんで聞いたあれや。 Zeebra って名前聞いたことあるぞ、これが Zeebra さんか。
RHYMESTER ってのは聞いたことあるな。と手当たり次第に CD を手に取って聞き始めたんですね。
南:そっから のめり込んで?
R:のめり込みましたね。入り口がSOUL’d OUTさんで、よりのめり込むきっかけになったのが、RHYMESTER さんとかZeebra さんとか。
日本語でバシバシラップしてくれる人で。
当事やと日本語ラップ的には Zeebra さんとか RHYMESTER さんはレジェンド枠になってたんだけど、僕は後追いで「さんぴん世代」と言われる「さんぴんCAMP」ってイベントをやった90年代の日本語ラップの先輩たちの音楽を後追いですごい、がーっと聴いてて中学生の時代に。
何が面白かったのかなーって今考えたら、それまでおとんの聞いてた歌謡曲とか聞いてた脳みそに Zeebra さんとRHYMESTER さんは自分のことを歌うんですよね。
俺が Zeebra って言うんですよね。
自分の名前を名乗って、自分がどんな奴かってことを歌うっていうのが俺はすごい衝撃で。
あと韻を踏むっていう歌詞の構造の面白さとかにものすごい のめり込んだというか。
「何これ?」と思って。
南:そっから自分でリリック書きたいとう思いになったのは必然的な感じなんですか?
R:そうですね。最初に歌詞の構造の面白さとか、韻を踏むっていう技の面白さとか、自分のことを自分で名乗って歌うっていうラッパーの「俺ここにあり!」みたいな大々と言えるんやっていうのに衝撃を受けて。
俺もやってみたいなと思ってたんですけど、やっぱ RHYMESTER を聞いたことによって、不良じゃなくてもラップできんねや!みたいなんで。
RHYMESTER の「グレイゾーン」ってアルバムを聞いた時に宇多丸さんの歌詞で、それまで Zeebra さんとかだったら不良な世界のこととか「悪そうな奴は大体友達」というフレーズ聞いてて、不良の音楽って思ってたんすけど。
グレーゾーンの「だから私は酒を呑む」という曲があるんですけど。
その歌詞で宇多丸さんが【口だけ達者「現代っ子」「モヤシっ子」「ひとりっ子」で「カギっ子」】という歌詞があるんですけど「全部俺や!」って初めて自分に当てはまったというか。
それまで不良の生い立ちとか歌われても、俺は関係ないしなとか俺全然不良じゃないしなぁとか思ってたんですけど。
その宇多丸さんの歌詞で「この人もしかして俺と近いんちゃう?」みたいなんで、俺も口だけ達者やし、カギっ子やし、初めて自分とラッパーの人の人生が当てはまったような気がして。
そのアルバムを聴いていくと「グレートアマチュアリズム」って曲で、ド素人が初期衝動をぶつけてやるっていうマインドは全然変わってないと。
RHYMESTER さんぐらいの人がそう言う曲なんで、俺もラップしてもいいんやなと。
Mummy-Dさんも「ねこ踏んじゃったすら弾けないが韻踏んじゃったらお前もライマー」って
楽器も弾かれへんし、不良でもないけど、俺もラップしてもいいんかなと思って中学2年生ぐらいの時に歌詞書き始めました。
南:当時どんな言葉を紡いでいたか覚えてますか?
R:当時はほんまにね、どうしようもない下ネタばっか書いてたけど、そういうのが喜ぶじゃないですか中学生は。
南:確かに(笑)
R:友達とかにも聞かせてたいじゃないですか。だから本当にモテたいぞ!みたいな欲求とかを書いてましたね。
当時からその時の気持ちをちゃんと書いてたような気がしますね。
正直、不良になりきって書くことも出来たんですけど、ちゃんと自分の思ったこと書いていいんやってRHYMESTERきっかけで俺も書けるって思ったからこそ、そのままの自分を書いたかも分かんないです。
もしかしたらもっと不良な人に感化されてたら、ちょっと悪めな歌詞を書いてたかもわかんないんですけど。
南:素敵ですよね、ありのままの自分で勝負してて。
R:結果、俺に近いと思った RHYMESTER さんは、全員早稲田出身で全く俺と格の違う人間やったって後々知るんですけど。
私、大学8単位で除籍となったんですけども。
南:そうなんですね(笑)
R:早稲田卒の皆さんとは格が違ったんです、会ったら全員180cmぐらい背高いし。
高学歴、高身長、高収入の3人やったんで、「全然違う人間やった!すみません、おこがましく重ねて」って思って。
南:あはは(笑)
MCバトル大会では日本一に輝くなど、素晴らしい経歴をお持ちなんですけど、その強さってどこから来てると思いますか。
R:それこそさっきの話に繋がるんですけど、不良じゃないにしろラップできるんやって思ったてのと、僕は大阪の南の方出身なんですけど、身近にヤンキー文化があって。
強いものに対する憧れとがずっとあったんですよ。でもなれないと、でもラップはそうじゃなくてもできると。
俺それまで人生でなかなか勝ったこととか、成功体験隊があんまりなくて。
スポーツとか勉強も両方とも苦手やったんで、小学生、中学生とか子供の頃って勝つって言ったらその分野しかないじゃないですか。
あとは喧嘩とか、そういった競争事ってまぁー勝ってない幼少期を過ごしてて。
ラップにはまって、その流れで海外のヒップホップも聞くわけですよ。
そしたら一発目で出てくるのは、当時は「8mile」っていうエミネムの出てる映画とかやったりするんで。
それが MC バトルの映画だったりするんで、エミネムが MC バトルで有名なっていくという。
それ見てカッケーみたいな、しかもこれ口喧嘩やん!みたいな。
俺多分、口喧嘩はなんとなく得意ではないですけど、なんかラップにしてとか、そういう思いつきみたいなことで喋るのが好きやったんで。
この喋るので勝ち負けがつくんやったら、腕っぷしとかないし、スポーツも苦手やし、頭良くないけど、もしかしたら?みたいなこと思ってたんですけどね。
ラッパーで「8mile」みてバトルやりたいって、めちゃくちゃベタなんですけど。
日本でもやってる人おるんかなって調べたら、KREVAさんとか出てきたのが、 B-BOY PARKって大会でKREVAさん3連覇してたりとか 、UMB っていう大会で般若さんが優勝した大会とか、そういうのがいっぱい出てきて。
どうやらこれは誰でもエントリーできると、それでちょっとやってみたいなと思ったんですよね。
中学校の時、周りにラップ聞く友達がそれこそ「グレートジャーニー」に出てくるヤマトとタクって奴と、あとヒロムって奴しかラップ聞く友達いなかったんですよ。
そいつらとラップの真似事みたいにしてたら、「お前上手いんちゃう?」って言われたのが人に初めてお前上手いなとか、褒められるとう体験に近くて、それでのめり込んでいったのかな。
強さの秘訣というかは、初めて人生で人に褒められるとか、得意なことが出来たっぽいぞみたいな。
南:当時そのメンバーで田んぼでサイファーを。
R:そうですよ。俺の家の裏に田んぼがあるんですけど、そこに集まって、当時はボイスレコーダーみたいなのにインストのビート入れてきたのをヤマトが流して、みんなでラップしてたんですけどね。
ほんまにカエルとかもううるさい状況でラップしてて、みんなでどうしようもない下ネタラップをして笑いあってたんですけど。お前アホか!とか言いながらゲラゲラ笑って。
一息ついて「もう夜遅いしどうする?」とか言ってて、ヒロムも呼ぶかとか言って、堺市の境界線を越えたら狭山って街やったんで、狭山のカラオケまで行って朝までずっとラップ歌ったり普通の歌を歌ったりとかして。
それが結構、僕のラップには繋がっていて、カラオケでいろんなラッパーの人の歌い方を真似して、この人はなんでかっこよく聞こえるのか?とか。
この人は何でラップがうまく聞こえのか?っていうのを実際真似して研究したんですね。
南:自分のものにしていったんですね。
R:完全に独学なんでラップは。
南:すごーい。
R:でも、発見していく過程の方が面白かったというか、この人なんで早くできんのか解ったぞとか。
ここにアクセントをつけてるから噛まへんなとか、この人何でこんな英語みたいに聞こえんのやろ?みたいな、ここの発音舌を丸めてやってんのかとか、ここに伸ばし棒入れたらこんな風に聞こえんねやなあ、みたいなんで色んな人を真似したのが自分のラップに繋がってるなと思うんですけどね。
南:いい青春時代ですね。
R:確かに、一時期はモテなかったとか、俺はイケてない、みたいなこと言ってたすけど。
確かに好きなことある時点でいい青春かもわかんないですね。
南:眩しいっすもん。
R:眩しいすか?眩しいんかな?
でも23歳までずっと彼女いないっすよ。眩しいっすか?
南:眩しいっすよ、ピュアな輝きが。
R:輝きあります?(笑)
淀んだ輝きやと思いますよ、今こうやって言ってるけど、男3、4人で田んぼの裏で、大真面目にカセット持って、小ちゃくなって、嘲笑の対象ですよね。
田舎やったんで、畑の持ち主のおじいちゃんとか、びっくりしてましたよ。
南:確かに(笑)
R:夜10時ぐらい作業終わりに「お前ら何やってんねん?」とか言われて、
「ごめんおっちゃん分からんと思うけどラップって言うねん」
「なんか分からんけど、悪さするなよ」
みたいな。
南:のどかー(笑)
R:変に見えたと思いますよ、真っ暗なところで輪になってボソボソ言ってるわけですから。
南:確かにお年寄りはびっくりしたと思いますね。
R:びっくりするし、ラップとか知らない人からしたら「あれ、黒魔術?」
南:うふふ(笑)
R:「宇宙人降臨させようとしてるのかな」みたいね
南:噂になってたかもしれないですね。
R:怖いですね。
犬も食わないについて
南:遊び心満載のシニカルな曲で、言葉がグサグサ刺さって最高にスカッとしました。
R:ありがとうございます。
南:痛快であっぱれですね。
R:そんな、あっぱれ頂けるとは。
南:勝手にすみません(笑)
「犬も食わない」は、バラエティ番組のテーマソングとして書き下ろされました。
噂でお聞きしたんですけども、今回のミニアルバムに収録するまでサビ部分しか完成していなかったそうです。
R:そうなんですよ、その番組がSNS世代と言うか、全人類が監視し合えるから不毛な揚げ足の取り合いとか、マウントの取り合いみたいなんが、、
多分、昔から人間にはあったんですけど、より激化しててそれが可視化されるというか。人の争いが。
逆に逆手にとって、そのマウント取り合ってる両方ともコントにして戦わせて、どっちもどっちやなと、でも私はこっちの方を応援したい。こっちも応援したい。みたいなするコント番組やったんすけど。
その番組を書き下ろしてくれて言われたんで、サビはまさしく「どっちもどっちやな」みたいな事言ってるんですけど。
サビだけできてサビ以外の部分、バースって言うんですけど、その部分をどうしようかって悩んでるうちに納期の時間が迫り。。
南:待ってくれないですもんね。
R:待ってくれないと言いつつ、今回はまー待ってくれたと思うすね。
すごい難しいなと思ったは、争いみたいな部分で、人間同士の争いは他の曲でも僕書いてたんですね。
前だしたミニアルバムの「どっち」っていう曲でもいわゆるマイルドヤンキーと言われるような種族の人達とサブカル系と言われる人たちのマウントの取り合いみたいなのを曲にしてたんで。
南:最高ですね。
R:それが被るなと思って、どうしようって思ってたら、最終の最終でじゃあ犬の話にしようってなって。
犬も食わないって確かに人間目線で偉そうかぁと思って、「夫婦喧嘩は犬も食わない」って人間目線で犬のこと馬鹿にしたようなこと言ってるけど、逆に犬も俺らのこと人間様って思ってないでしょみたいな。
そんなことを勝手に俺が想像して、人間目線で犬のことを見てアホな犬やなとか、可愛いなとか言うんですが、この「可愛い」とかは人間の支配者の目線なのかなと思って。
逆に犬もアホな奴だと思って俺のこと見てんじゃないかなと思って1バース目が出来ました。
南:面白い。
R:これは一応ね、女の子に飼われてる犬という設定で、歌詞の中でも代々君たちの右往左往を見てきたと。人間の友達として。
おじいちゃんは縁側に座って、お父さんはテレビを見ながら、僕は膝の上に座って君の手の平の携帯で人間の右往左往を見れる時代やから。
この犬の目線で書いてみてでも、それだけでは終われないんでより争いにするために、犬の中でも争いはあるなと思って2番目で野良犬を登場させてます。
飼い犬と野良犬の争いになっていくんですけど。
これは犬の争いでもあって、人間の、ラッパーのことにも置き換えられて実は。
飼い犬ってのがメジャーとか事務所に所属して活躍してるラッパー。
野良犬ってのは、いわゆるストリートとかアンダーグランドでやってる人っていう目線でそこに置き換えても聞けるかなとないう。
色々な楽しみ方をできる曲になってます。
南:面白いですね。
Creepy Nuts / どっち
ペットボトルと低級霊
南:「よふかしのうた」はミュージックビデオが公開されております。
撮影場所はオードリーの春日さんの自宅なんですよね。
R:そうなんです。さっきの「犬も食わない」のオードリーさんにも関係あったりするんですけど、この「よふかしのうた」の MV がオードリーさんのラジオのイベントの10周年のテーマソングを作ってくれって言われて。
もともと我々Creepy Nutsはオードリーさんを尊敬して、松永さんもむちゃくちゃオードリーさん大好きなんで。
それで作らせて頂いた曲なんで、そのMV を実際にあの春日さんの家で撮るっていう、ファンとした胸アツな展開なんですけども。
実際にむつみ荘で撮らしてもらって。
南:テレビでも公開されてて有名なお部屋ですよね。
R:そうなんですよ。春日さんがそこを引っ越される可能性があるという話もあったんで、もしかしたらメディアに残るむつみ荘の最後の作品なのかもみたいな。
南:貴重な!
R:むつみ荘は「マジで現場保存お願いします、物をなるべく動かさないようにしてください」っていう条件付きで貸して頂いたんですけど、ミラーボールを持ち込んだり、ターンテーブル持ち込んだりとか、お客さん10人ぐらい勝手に入れたりとかして、好き放題撮影させてもらいました。ほんまにありがたいですね。
こんな嫌ですもん絶対。自分の家で考えたら。
自分の家で自分がいない間にラッパーと DJ が入ってきて、色んな物を持ち込んで撮影するなんて考えられないんですけど、それを快くやらせて頂いて。
南:広い心で。
R:ありがたいですね。
南:実際行ってみてどうでしたお部屋は?
R:ほんまに狭かったすね。
でも実家の部屋とかあんな感じなんすよ。結構僕も片付いてないとうか、物で溢れてる系なんで妙な安心もありました。
松永さんはずっとオードリーさんのラジオを若い頃から聞いてたから、聖地巡礼的なテンションやって。
俺はどっちかと言うと、実家帰ってきたみたい感じで。
俺の大阪の実家も結構古くて、でも俺の部屋なんか超汚くて、物で溢れてて、もう何年も手をつけてないスペースとかあって。
南:こえー。
R:触るのが怖い本の山みたいなのがあって、それを思い出して懐かしい気分になりました。
変な話ですけど、住めるなぁみたいな、部屋ってこうなるもんやろなみたいな。
南:じゃあ初めて行ったのに懐かしい気持ちに?
R:なんか不思議な気持ちでしたね。
南:ちなみに今はどういうお部屋で暮らしてるんですか?
R:今はですね、むつみ荘とは比べもんにならないですけど、物が散乱してる部屋にお住まいになられてますね。
南:お住まいになられてるんですね。
R:地面とかに物を置いてしまう、片付けるというか、俺はどこになにがあるか分かってるんですけど散乱してますね。
棚とかに直せばいい本を地面に置いたりとか、寝転んで読んでたものなんで、それをそのまま閉じるとその場所に置いたままになるじゃないですか。
南:(笑)
R:そういうことが多々ありますね漫画とかが。
南:形跡がいろんなとこに残っているんですね。
R:あります。たまに友達が入ってきたら「強盗入った?」って言われるぐらい散らかってるんですけど。
南:なかなか(笑)
R:「俺の仕業です。全部」みたいなことになってますね。
でも一応、無機物で汚いんですよ。
有機物で汚いのは僕も嫌なんで、食べ物系とか、俺虫とかめっちゃ嫌なんで。
南:ミニ情報ありがとうございます(笑)
R:まだ本、服とか書類とかやったら無機物なので、そんな、、まぁホコリはあるかもわかんないですね。
あとやっぱ凄惨な光景にみんな引くのがペットボトルですね。
南:ペットボトルが転がってるんですか?
R:転がってる場合もあります。コンディションによっては。
飲み物を飲むんですけど、飲んだ後に地面に置いちゃうんですよね。
南:ペットボトルすら?
R:だって、なか空で、フタ閉めれば何も汚くはないんです、、
南:確かに、オブジェみたいな?
R:オブジェ。もう無意識のうちに溜まっていくから、ふと気づくと無数のペットボトルが集まってるんですよ。地面とか机の上とか。
南:怖い話じゃないですか(笑)
R:僕怖い話も好きなんで、怖い話をラジオで聴いてたら、心霊研究家みたいな人が「部屋汚い人気をつけて下さいね。ペットボトルとか家におきっぱなしにしてると低級霊が集まってきます」って。
南:えぇそうなんだ!
R:ペットボトルが入れ物になって、低級な動物霊が入ってくるんですって。
低級だらけや俺の家やばぁと思って。
南:あはは(笑)
R:早急に片付けましたけど、気がつくとまた、、
今だから前ほどですけど、多少の低級霊は帰ったらいると思いますね。
南:じゃあ一人暮らしじゃないんですね(笑)
R:一人プラス何匹かになってますね。
南:なんかいいでね、賑やかで(笑)
よふかしのうた / Creepy Nuts
板の上の魔物について
南:「板の上の魔物」という曲ですね、テレビドラマのオープニングテーマとなっております。
原作を熟読されたそうなんですが、作品とCreepy Nutsとの共通点などを感じて書かれたんですか?
R:そうなんです。その漫画自体元々知ってたんですけど、改めて見返してみると、こんなに重なるんやと。
漫画自体は漫才師がテーマなんですよね、やっぱ漫才コンビじゃないですか、その漫才コンビ二人組がステージの上に立ってお客さんを相手に勝負し続けるわけですから。
この二人同士のお互いでの笑かし合いとか「俺の方がおもろい」「俺の方がおもろくなってやる」みたいなとこもありつつも、結局最後は同じ方向向いてとか、そういう部分がかなり重なるなっていうのがあって。
かつ、その漫画ラジオの部分から始まったりするんす。
ステージ、漫才、寄席、ネタ作り、ラジオ、そういうところが主に描かれるんですけど。
これが特に我々Creepy Nutsというグループに重なるなと思ってて。
我々も松永と二人 DJ とラッパーの二人組にコンビで常にステージに立って。
我々ラジオ番組もやってるんで、ずっと喋り続けてるわけですよね。
ラジオで喋って、ステージでラップも喋り言葉に近いんで、 MC でもしゃべり合ってて。
相方の松永はピンでラジオやってるし、僕は僕で 3時間ぐらい日本語ラップについてしゃべるみたいなトークショーやっててですね。
常に喋ってるなと、で常に板の上、ステージの上に立って戦ってるなってとこが重なって、それで書かせてもらいましたね。
さっきのオードリーさんの話もそうですけど、やっぱりステージの上に立つ人とか、お笑い芸人さんとかへの尊敬の気持ちがより深くなったし、表現の仕方は違えど板の上に立つ人間っていうのは毎日毎日戦ってねんなぁとより実感する日々やったんで。
それで書かせてもらいましたね。
<書き起こし終わり>
「よふかしのうた」収録 💿
関連記事