『This is OKINAWA feat.CHICO CARLITO』はMuKuRoのビートジャックアルバム『JACK THE RIPPER』に収録されています。
この曲はChildish Gambino『This Is America』をビートジャックしたものです。
原曲ではアフリカンアメリカンの表層的なイメージ(ゴスペル・ダンス)と対象に迫害の歴史や犯罪性、貧困といった闇の部分も同時に描かれ、そのコントラストが印象的な曲です。
『This Is America』は2019年グラミー賞主要2部門の最優秀楽曲賞と最優秀レコード賞を受賞し、HIPHOP初の快挙となった作品です。
その原曲のメッセージを踏まえ『This is OKINAWA』では「沖縄」という南国・陽気というイメージの裏に隠れる戦争の傷跡や外部の人間(観光客、在日米軍)との関わりや貧困などを沖縄在住のMuKuRoとCHICO CARLITOが歌うという曲です。
どちらの曲も表面的なイメージだけでは片づけられない、複雑に絡み合った歴史や想いを感じることができます。
リリックの底流にある感情
爆発的に増えた中国人観光客や、未だに多くの存在する米軍基地。
沖縄にすむ上で感じる圧迫感や人種問題などがリリックの底流にあるように感じます。
その現実を悲観的に表現するのではなく、観光客とハメを外したリリックと共に表現する対比も素晴らしいと思います。
貧困問題
原曲とも共通する点で、沖縄では貧困問題も重要なもので、CHICOのバースでは重点的に描かれてます。
Yellow Yellow Yellow White Black Yellow yah
ghetto ghetto ghetto ghetto
俺の仲間抜けるghetto ay
借金まみれのおばさん 旦那が死んで未亡人
負の連鎖を断ち切るなら勉強スポーツにMusic
CHICO CARLITO『47』との共通点
<原曲>
Grandma told me
(ばあちゃんは俺に話してくれた)Get your money, Black man (get your—Black man)
(お金を稼ぎなさい、黒人の男なら(手にすのよ、黒人の男として))
上記の原曲のリリックはCHICO CARLITO『47』に通ずるものを感じます。
『47』はおばあちゃんの壮絶な半生を描いたものでHookがおばあちゃんの教えの言葉となっています。
勉強しなさい 自分の将来のため
勉強しなさい おばぁが出来なかった分も勉強しなさい いい仕事に就けるため
勉強しなさい お金に困らないため
『This is OKINAWA』では原曲のリリックから”Black man“を除いて歌われています。
てぃんさぐぬ花
Outroでは沖縄民謡の『てぃんさぐぬ花』をサンプリングして、沖縄県民の誇りや魂を感じさせる見事なラストです。
今は大和のよう 何も変わらぬよう
どぅし(同士)のゆしぐとぅ肝に染めてぃ
<原曲>
親ぬゆしぐとぅや 肝に染みり
(親の言うことは 心に染めなさい)
方言
<曲中に出てくる方言>
■わったーのうちなー (俺たちの沖縄)
■どぅしはアメリカ (同士はアメリカ)
■やっけーなメディア (ヤバいメディア)
■楽しむないちゃー (楽しむ内地の人)
■にりてるまいちゃー (めんどくさい、毎回)
■外人じらーのしぃーじゃー (外人みたいな先輩)
■1/4外人のわーまとめてうちなんちゅ (1/4外人の俺まとめて沖縄人)
まとめ
『This is OKINAWA』は原曲と繋がる部分が多く、沖縄在住のラッパーでしか歌えないトピックと心情を描いています。
Macchoのパンチライン”どの口が何言うかが肝心” をわきまえた意味のあるビートジャック作品だと思います。
音源
音源は配信なし、沖縄ストリート限定版ということで入手困難ですが、2020年2月現在「CASTLE-RECORDS」にてまだ販売していました。
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