THA BLUE HERBが伝える戦争「REQUIEM」

心情で伝える「残酷さ」

 


 

ただのエンターテイナー以上に何を語れるか
俺なりに それなりに考えてんだ

戦争体験者が少なくなり現実味が薄れる中で、THA BLUE HERBは戦争当事者が抱える戦後も続く苦悩や罪悪感を描写し悼む気持ちを綴りました。

事象として終戦していても、心情では永遠に続いているという残酷な事実は不感症な我々にも衝撃的なものでした。

 

置き去りにしたままの仲間が可哀想
それが頭から離れないと
口癖だった 丸まった背中

 

あれは昔の話だって言ってたが
きっとずっと苦しんでたんだ
生き残った事を恥じていた
寝言でうなされて謝っていた
墓まで持って行こうとしていた
あなたの恥は もう全部 燃えました

リアルな描写や心情を表現することは、ILL-BOSSTINO自身も苦しみ、書くのが辛かったと語っています。

 

 

前後の曲との繋がり

 

5thアルバムの「THA BLUE HERB」は2枚組で全30曲、150分を超える超大作です。

各曲が繋がっており、アルバム全体が壮大なストーリーとして仕上げられています。

「REQUIEM」の前後の曲からメッセージの繋がりを見ても非常に興味深いです。

 

THERE’S NO PLACE LIKE JAPAN TODAY

現状の日本の矛盾やフラストレーションを歌った曲

平均寿命は世界1位 そして幸福度は58位
この国とっくに色々古い

 

REQUIEM

過去の日本の矛盾や現在までの繋がり、人々の葛藤や苦悩、先人への想いを綴った曲

 

GETAWAY

現状、窮屈な日本での生き抜き方のヒントを示唆した曲

他人の視線と 己の見栄を
自然といつも気にしてばかりでしょ
その心ここに在らずなイミテーション
カッコーの巣から飛び立って逃げろ

 

 

 

 

用語の解説

 

彼等シナリオだと今は靖国にいて
アメリカの舎弟になった祖国を見てる

靖国神社は戦没者を慰霊追悼・顕彰する神社です。

靖国神社にA級戦犯(侵略戦争の中心的指導者)が合祀されていることを理由に、政治家による参拝がしばしば批判を受けている。


鹿児島県知覧に行けよ
そこで俺等を待ってる

知覧特攻基地があった鹿児島県知覧に現在は知覧特攻平和会館が建設されています。


教科書に墨を塗っていた教師

<墨塗り教科書>

第二次世界大戦の敗戦直後に、国家主義や戦意を鼓舞する内容を抹消したもの。


田中角栄と周恩来 一億総中流
ノリノリなジェットコースター

田中角栄と周恩来

1972年、当時首相であった田中角栄と周恩来が日本と中華人民共和国が国交を結んだことを表明したものが「日中国交正常化」

国交を結ぶ以前、日本はアメリカと共に台湾(中華民国)と国交を結んでいたが、それを断ち中華人民共和国と経済成長する道を選んだ。

 

一億総中流

内閣府の「国民生活に関する世論調査」において生活の程度を「中流」と回答したものが1960年代の高度経済成長期以降増加し、1970年代には9割以上となった。


ノモンハンからインパール 白骨街道
ガダルカナル 渡る 飢餓海峡

ノモンハン事件

1939年モンゴルの大草原で日本とソ連が戦ったもの。ソ連の近代兵器を前に、日本は2万人の死傷者を出し敗北した。

陸軍上層部は敵を軽視し、兵は貧弱な装備で戦わされました。

敗戦が決定的になっても無謀な作戦が繰り返され死傷者を増やしました。

日本軍はこの敗戦から学ぶことなく、その後の太平洋戦争でも上層部のメンツのために兵を犠牲にします。

 

インパール作戦

作戦に参加した殆どの日本兵が死亡したため、現在では史上最悪の作戦と言われている。

司令官の強引な主張により作戦は決行されており、兵を軽視していた証言があがっている。

ろくな食料を持たず決行されたため、作戦失敗後の退却戦にて飢餓や伝染病で多くの死者を出した。

力尽きた戦友の白骨が後続部隊の道しるべになったことから「白骨街道」と後に呼ばれた。

 

ガダルカナル島の戦い

1942年ガダルカナル島を巡った日本とアメリカの争い。

度重なる作戦失敗にも関わらず、司令官は頑なに総攻撃を遂行し、多くの兵士が命を落とした。

また、島に残された兵士は物資の支給を受けれず飢え死んだ。


その兵隊さんにガマの外追い出されて死んだ
おじいやおばあに

ガマは沖縄の方言で洞窟、鍾乳洞を指します。

戦時中は防空壕として利用されました。


色は匂えど 散りぬるを
貴方がたの苦難を忘れず生き抜くよ
我が世誰ぞ 常ならん
されど日差しは暖かく 春は花やぐ
有為の奥山 今日越えて
この声で 餞の言葉を添えて
浅き夢見じ 酔いもせず
滅び行く者共に思いを寄せる

サビは「いろは歌」の文章にBOSSの想いを付け足したものです。

いろは歌は仏教的思想を歌ったもので、その解釈は仏教用語で説明できます。

 

色は匂えど 散りぬるを

匂いたつような色の花も散ってしまう
仏教用語では「諸行無常

 

我が世誰ぞ 常ならん

この世で誰が不変でいられよう。
仏教用語では「是生滅法

 

有為の奥山 今日越えて

いま現世を超越し
仏教用語では「生滅滅己

 

浅き夢見じ 酔いもせず

はかない夢をみたり、酔いにふけったりすまい(悟りの境地)
仏教用語では「寂滅為楽

 

 

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