ZORN「LOVE」緻密で濃密なストーリー|音源レビュー

「LOVE」は徹底的に無駄を削ぎ落した、究極のシンプルという印象を受けます。

奇抜なトラック、フロウ、世界観はなく、誤魔化しの効かないスタイルで最高峰の「日本語ラップ」を示しています。

LOVE / ZORN

1.In
2.Love Yourself
3.I Wanna Be A Rap Star
4.Blood
5.Tokyo
6.246 feat.UA
7.All My Homies
8.Muse
9.My Love

1.In

オーケストラによる壮大なイントロ。

曲のプロデュースは、サザンや槇原敬之、ガンダムのサウンドを手掛けた門倉 聡。

2.Love Yourself

痛烈なDisから始まるこの曲。

かなり病んでる様子を描写しており、どうやら自身を第三者目線で語ってることが分かってきます。

自身の楽曲「My life」のライン「全然金無くても成功者」からの引用などもあり、ラッパーとして着実にキャリアを積み上げてきた彼の苦悩が垣間見えます。

欲しいのは平凡か栄光か
金がなくても成功じゃねぇのか?
<歌詞カードより引用>

そして、ラストのパンチライン・ライムの畳みかけは圧巻!

柴又日記収録の「かんおけ」に匹敵する怒涛のラスト!

3.I Wanna Be A Rap Star

ここからは、ZORNがいかに他より優れたラッパーであるかを示す、HIOHOP用語でいうとこのボースティング(Boasting)も曲が続きます。

「RAP STAR」といっても、KREVAが「愛・自分博」でカヴァーした「RAP STAR」とは、まったく違うテイスト。

みんなが目指しているもの、リスナーやメディアが祭り上げたような「RAP STAR」、またはフレックス(金持ち)自慢だけの「RAP STAR」には興味はないというメッセージ。

その上で、「俺が掴み かけてるしょんべん」という、ZORNが目指すものの次元の違いを感る曲です。

 

 

4.Blood

「Blood」血液や血を意味する言葉です。

HIPHOPで「Kill」とは<他を圧倒すること、相手が死んじゃう程ヤバい事>を意味しますが、ZORNの「Kill」はスキルが高すぎて「残酷さ」さえ感じます。

一節の言葉に心血を注ぎ、他を血祭りにあげる

それ程、強い力を感じる曲です。

この曲で「マンコも濡れねぇ」「きんたま2個」というラインがありますが、この言葉すら世界一かっこいいです。

5.Tokyo

ここからはHood(地元)、愛をテーマにした曲が続きます。

6.246 feat.UA

アルバムのテーマは「LOVE」

禁断の愛についての歌です。

UAのサビが艶かしい。

神からお前は地獄行きって
LINEが来たって既読無視
<歌詞カードより引用>

7.All My Homies

家族の曲では泣けるリリックを書く人が、昔の話をしたら そこらのヤンチャ系ラッパーよりエグいパンチライン残しまくるという、ラッパーとしての格が違いすぎます。

バッズの香りがする青春
<歌詞カードより引用>

パンチラインを残しまくるワードセンスが流石です。

1Varseでのライン「全員はいなかった成人式」がラストの布石になっている素晴らしいストーリー展開。

今度ライブあっから来い
成人式やった場所
<歌詞カードより引用>

 

<成人式やった場所>かつしかシンフォニーヒルズ
7/28(日)東京 ZORNのリリースツアー
1階770席、2階548席

 

 

8.Muse

「Muse」とは「物思いにふける」という意味の言葉です。

最初聞いた時は、次の曲が奥さんに向けて歌った曲なので、結婚する前に物思いにふけている様子や苦悩している様子を描いているのかと思いました。

しかし、妙に違和感が。

ZORNの特徴は固有名詞やエピソードを織り交ぜた「具体的」なリリックです。
<Hey Money Remix , COUNT ON ME 歌詞カードより引用>

帰り道ぱぱすで買って帰るパンパース

嫁さん今日マツエク
娘たちは TikTok
そんでパパはHIPHO

しかし、この曲はかなり「抽象的」

「Muse」とは<芸術の女神>の名前でもあります。


<【Muses】文芸・音楽・舞踊・哲学・天文・芸術の女神たち>

ラップ(音楽)に対して思いにふける様子を女性との恋愛に比喩していると考えて聴いてみると鳥肌です。

9.My Love

ZORNが家族をテーマにしている、言わずもがな名曲です。

「Muse」とは真逆の徹底的な「具体的」

2人のエピソード、ZORNの思いに心が震えます。

なぁ知ってたか 俺はな
お前に憧れてんだよ
<歌詞カードより引用>

 

「Love Yourself」では何度も立ち上がること、「I Wanna Be A Rap Star」では独自の目指す道がある事が語られ、この曲では <ラッパーとして全てを手にする>ことが宣言されアルバムが締められます。

 

一回全てを手にしたい
とりあえず全てを手にしたい
そんで成功と平凡 見比べて
やっぱこっちだったなお前に言いたい
<歌詞カードより引用>

まとめ

「1本の映画を観たような..」という感想がよくありますが、、

このアルバムは1曲づつ濃密なストーリーがあり、アルバム全体の繋がりも緻密に構成されいます。

まさに「9本のシリーズ映画」それ程の作りこまれた大作です。

 

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