「ただいま」
夜、玄関の敷居をまたいだ。
「おかえり」
上で寝てるかと思いきや まだいた。
屈託無く笑いながら駆け寄る子どもらを、その勢いのまんま 抱いた。
何てったって子宝 だから、
クタクタになってたって重いはずない。
この頃の暗い思い 煩いどころか、四半世紀分の古傷をも癒す愛。
心が躍り出すくらい幸せな気分に浸かれば、疲れなんて 何て事は無い。
何て事だ…
はたと気付く。
“嗚呼、今俺は、あの日見た夢の中を生きてる…”
「お前、ホント変わんねーのな」
いや、すっかり変わっちまったお前に言われてもな。
近況もそこそこに「手取り何万くらい?」
緩めてやりたいよ、お前の首絞めてるそのハイブランド・タイを。
どうしよう?
同じ色をした隣の芝同士を比べる
並べるほど冗談みたいに薄っぺらい。
そんなん信じるなよ?
目が覚めてても、その冷めてる目には真実など映ってない。
誰かを踏み台にして勝ち上がるよりも
「金など無意味だ」と言える価値がある夜を
数え、陰ながら支えてくれてる家族へ還元。
長らく些細なことで悩んでは 病んでた。
実は、まだ傘さしてるのは俺くらいで、とっくのとうに雨は止んでた。
遠くの方に晴れ間。
いつからか探してた太陽が、ずっと雲の向こうで輝いてた なんてな。
川の字で夢見てる嫁と我が子に、
“嗚呼、今俺は、あの日見た夢の中を生きてる…”
これは明晰夢。
頬をつねるも 痛いだけ。
常ならぬのが世の常みたいだけれど、俺は俺のペースで生きる。
時代は激流。
悔し涙出切る。俺に何が出来る?
朝になるまで本当の気持ちと 自問自答。
滲む文字と じっとりと汗ばんだ手。
挫折し、挙句には LP一枚も出せずに、
年齢だけ ゆうに33回転。
正夢と逆夢の境目で たくさん書いてる。
「紙は要るか?」ノートはいい、
だがインクをくれ。
不死身に見えた奴らに逝き遅れる。
何が ″RIP″?″安らかに″?
死者は休まない。
逆に寝惚けてる俺を揺り起こす。
まさに明日は我が身。
己に鞭打って、音も立てず終わってく この一瞬をワンテイク。
文字 通り 夢中で 今一人、噛み締める。
in my dream
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