韻を畳みかける日本語ラップ -PART2-

SOUL SCREAM / Love, Peace & Happiness


SOUL SCREAM18年ぶりのリリースとなる作品。

E.G.G.MANの細かな韻の畳み掛けと、独特なアクセント・フロウで作る唯一無二のグルーヴは健在で、リスナーの度肝を抜きました。

来るネクスト 向けてベスト 尽くすべき時
常日頃 すべき事 手に持つマイクロフォンで
毎度 毎夜 マイ度 最高ハイ
愛を 開放していく態度
太陽みたいに輝き放つだろう
苦労 苦悩 動か
降参 と悟った後に右往左往して
抉じ開け 開けゴマ

 

Love, Peace & Happiness」収録 Link

 

RHYMESTER / B-BOYイズム


クラシックからも一曲。

Mummy-Dのレイドバックしたフロウと日本っぽい抑揚が相まって聴き心地最高なラインです。

ひずむイズム
こそらと気付く
奴らのカラー 分かつ このプリズム
奴らに共通なこのリズム

 

リスペクト」収録 

 

スケボーキング / white sonata no.8 featuring PES (RIP SLYME)


本人も自画自賛してたという、PESのメロディアスなフロウに韻が乗っかり最高に聴き心地いいヴァース。

さも何もなかったかの様に
可もなく可もなく 然に
カモフラージュ都会の片隅
サボタージュ込みたたずみ
目の前フラッシュバック記憶のマッチアップ
想い出キャッチアップ心のマッシュアップ

 

リスペクト」収録 

 

 

チプルソ,PONY,DDS,晋平太 / Devil’s tongu


「フロウ者」ことチプルソの上がり下がりの激しいジェットコースターフロウが中毒性抜群です。

ジェットコースター フロウだ 乗車
テイクワン 1イ言わすよ
キルよ(殺すよ)!
四方八方 バット
発狂 大都会にボム!
放送禁止エヌジーワード
モザイク無し裏社会チェックミーナウ
二の次 一筋 仕事人
と金ワク付きメリーゴーランド 

 

SHINPEITA presents M.B.A~mic battle association~」収録 

 

志人 / 狐の嫁入り ~神様が棲む村のうた~


『狐の嫁入り ~神様が棲む村のうた~』は地方に伝わる怪異を題材にしており、その怪しさと不気味さは韻の畳み掛けによってより増大しています。

圧巻な韻の畳み掛けは、韻に関与しない言葉を殆ど排除しながらも、ストーリーの筋や世界観を崩さないという神業です。

昔々 深い 沼地に咲く 蓮の花に座り
澄まし顔の 水澄ましが きつく抱いた夕闇 揺らぎ
暗い夜道 ふわり 浮かび上がる 村に 歌い

あらましき 災いに やかましい阿唐獅子
風上に 抗いし 山並みに 逆らい花は散り

閻魔様に 天は黙り 剣片喰 禅袴に 伝鉞 研磨かかり 線露に 田河原
面重なり 点現し 芸は盛り 生儚き 名は名無し 平和語り 念釈迦じゃ
宴酒場に 命高鳴り ええ魚に玄米と 献杯と 返杯を 先代よ天体へ

の嫁入りの晩 三つ目の狛犬が 手毬 ねだり 絵描きせがむも根無し
困り果て弱い雨終わりかけ怒鳴りたて
御上かて 逸らした目 空見上げ おら知らねえ

 

「醗酵人間」 

スガダイロー演奏による別Verは志人 & スガダイロー『詩種』に収録されています。

「詩種」 

 

 

KICK THE CAN CREW / GOOD TIME!


リトルのお通りだ
夜通しだ 土曜日は 故障しな
踊りな ここが土俵際
予想以外のコトが待ってるぜ
きっと あの娘ならかまってくれる 

 

「GREATEST HITS」 

 

SIMON JAP / 起死回生


『起死回生』はSIMON JAPのハードコアな世界観を持ちながら韻もハードに踏みまくる楽曲です。

神に拝んだって食えねぇおまんま
ブレねぇこのナンバーが売れて土壇場
信念曲げずに やめずに 負けずに
耐え抜き 前向き引けねぇ崖っぷち
奈落の底にいるならず者に
鳴らす音に共に語る誇り
上がる狼煙 叶う望み
カタストロフィん中でもかざすトロフィー

勝算少なめ降参する訳ねぇ
両断する邪念 共感するMy Men
王冠するまで量産する金
評判覆す 大番狂わせ

ART OF PAIN」 

 

 

LITTLE,LIBRO『コノクニ』


2001年発売のオムニバスアルバム『思考回路』では、数々のアーティストが少年犯罪、環境破壊という社会問題といったテーマに真っ正面から取り組んでいます。

その中で、LITTLEとLIBROという珍しいタッグがあります。

高音ボイスで超韻の固い2人が期待通りのライミングを魅せています。

現代は武士道などなくむしろ
無軌道でその上すり寄る 無気力
それでも浮き世月夜次の
感動をオレは射抜く弓を
いっぱい引きこの一回きり
の生や死と常に一対一
いつの時代も一緒なんだ
立ち止まんな立ち止まんな

思考回路」収録 

 

降神 / 時計の針


『時計の針』は降神の独自の世界観と異次元の韻とフロウを世に知らしめた作品です。

この曲で志人となのるなもないの2人は細かい韻を連続的に繋げて独特なリズムを生み出しています。

なのるなもないの2ヴァース目は全て [ a i a ] で踏み倒す圧巻のヴァースになっています。

現在の2人のスタイルとは若干異なり、韻が入れ替わったり、離れた場所で踏んでいたりと複雑な構造になっています。

(なのるなもない)
Hurry up Hurry up 時計の針は
若さを燃やす進む唯一の神だ
ハイヤー ハイヤー
自らの尻叩かなきゃ
間に合わずいつの間にOUT
バリアー 張り合
この陣地 やり場のない
怒り込めた言葉の
這い上 がりな 東京砂漠のタリバン
俺等がアルカイダ
鍵穴には血と汗ののみ
確かめろ何か在り処
なんや かんや言う周り遮断
shut up 交わりはしない
町は カーニバル 何が 始まる?
神掛 かりな 体当 たりは
らららいららーららー
神風 吹かす為の
たりらりらん たりらりらん

(志人)
下手 ネタ リーフ ネガティブ
目駄 目なプレスされた
ネタ根掘り堀り
Weed ほっぺたに ケタミン
アシッドにアンフェタミン
手取り足取り
教えてあげられるなんダリーから
made in アムスでpit in
一人満面の笑み
きっと二万名の人が
レッドアイキャッチする家畜
マジ バッズ バッチグーアンテナに
かなり並み良い犬かなわない
手に バラしたらmother
まだ wanna be 人間
傍ら 麻原 まだ高 ら笑い

降神」収録 

 

志人・スガダイロー / ニルヴァーナ-涅槃寂静-


『ニルヴァーナ-涅槃寂静-』は全て日本語で構成されており、細かい自然や感情の描写が美しい楽曲です。

そして志人は1つの韻で平気で5,6個、多い時は20個以上の韻を踏んでいます。

いつから 見つからなくした絆や
一途な 自ら 静かな ニルヴァナ
幾多を経て見るから
傷だらけの真空管の中
青い悟り 謎に宿り
籠に入れられた鳥は飛び
さあ来い 便り
郷に ハーモニー 運び
あの日 なぞり

行き着く果てなど未知数
入り組む心と知りつつ
シリウス 散りぬる
醜く見えるが息づく命は
身に降る 事実よりも美しく
意味する 真実 シク シク四苦八苦
チク チクタク ちぐはぐ過ぎ去る
インビジブル信じ抜く
吹きすさぶ嵐に勇気を口ずさむ
幾ばくの夢を詰め込み浮かぶ
真空管中 ジグザグ歩行でチンプンカンプン
ぎくしゃく ワク ワク 打ち砕く
しくなるなる シグナル wo
逸脱 静まる 見下す無く しくまず
 ピースマーク に繋ぐ
振り返らず 繰り返さず
無に帰る 理由無く 自由なるユニバース

「詩種」 

 

 

AKLO / Too Fast


AKLO『Too Fast』はオートチューンを駆使して終始メロディアスに進む、流れるようなフロウが特徴的な曲です。

しかし、それと相対して韻がとても硬く、カチッと小節のケツで気持ちいい韻が入ってきます。

スムースなフロウと固い韻が相乗的に効果して、とても聴き心地がいいという新感覚があります。

Hasta La Vista 掻っ攫いが 得意な半端ない奴
Up a Gear また Up a Gear
新記録 Lap of The Year
進みながら企みが増えてく
まーつまりは 止まるとこを割愛さ

REGULAR」収録 

 

LIBRO / 胎動


LIBRO『胎動』はメロディアスなラップをベースに、韻は小節のケツだけではなく、小節のケツと頭で踏んでいたり、連続で畳み掛けたりと変則的です。

韻を置く場所を限定的にしてないことでメッセージ性に溢れるリリックになっています。

メロディアスなラップで前衛的な曲なのに、Hookが1フレーズのリフレインという90年代HIPHOPらしさ全開というギャップが癖になります。

季節外れの急な大雨
恐れていたついにこの場面
やることなすことうまくゆかず
とうとう君は愛想を尽かす
この世の中で逆らえぬ流れ
運命なのかな出会いと別れ
はぁ 一つため息
その後は決まりきった駆け引き
思い出した途端いやな予感
災難が襲うジャイアンどかん
どかなこの場はいつもの風景
災い振り払うお守りのブーケ
手に取り向かう湖のほとり
巣から落とされた不幸な小鳥
それでも真っすぐな無謀なほどに
行こうかそこに夜明けの踊り
演じ続ける 現実抜ける 連日ただ握る鉛筆
光に溢れる本来の役目
捨てちまった姿おれは見たくねえ
抑圧されてた才能滞納することなく一気に解放
ほら君の隠されてた財宝待望胎動を始めたぞ

胎動」 収録 

 

OZROSAURUS / ON AND ON


MACCHO特有の細かい韻を力強く畳み掛けています。2:33~

うろたえねー 前へ 答え そりゃ MY WAY
もがいて ないで ひたすらな夢
絶えず運命 抱いたまま上
退屈いらねぇ TIME IS MONEY
この際はダイレクト まさに外伝
うだつ上がる HEY うわっつ内面
絶えず運命 描いたなら
二つないねたずらなGAME

 

Bonbero / Billy Mandy feat. noma


『Billy Mandy』ではBonberoとnomaが全編高速フロウで細かい韻を畳み掛けます。

音を細かく区切るようフロウでその区切りごとに韻が配置されており聞き心地が最高です。

nomaヴァースの前半、小節のケツは全て [ i u ] の韻、そして小節の頭や間の言葉でかなり踏んでいて、それも複雑に絡み合っており非常にテクニカルです。

センスあってもスキルねえ奴多すぎる
全部あって一流
面食らったかキッズ
天賦の才と
ビートメーカーに聞いたらみんな
俺はレイプ魔だって言う
ケツ穴よりキツいパンチライン
これじゃペニバンさえもイク
808鳴っている
ベース ハイ そしてキック
テレグラムで押して引く

ヴァース中盤では [ e – a ] の韻で畳み掛けており、間の言葉を伸ばしたり、縮めたり、発音しなかったりすることで韻として機能させています。

その流れの中で [ e i a ] という韻も織り交ぜています。

夜が明けるま
この電話はバイブレーター
てかげえなそのレース ナルも透けてない?
インターネットカフェ奥のペア席で汗だ
上のレジスター前の店員さんも
り出すけど彼も抱
ちなみに練馬出禁な

そしてラストの高速の畳み掛けと複雑に入り組んだ韻は圧巻です。

“貧すれば鈍する”ならどうする
校すぐ退学処分
中卒アルバイターに
すぐ  超うるさい 社員
毎日 満員電車に乗ずる10時間拘束
退社し帰路に着く
昨日りどっと疲労が溜まり
もうリミットとうに超えて
心筋塞とかで死にそうだ
待ち望んだ日曜日のささやかなご走は
ミニストップのクリームソーダ
キリンの首よりでけえ竿だ
ビリーよりも足りないよお金
羊の皮をまとった
月の夜は野犬に気をつけな
それにしてもやけに冷えるな今日は

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Doll」 収録 Link

 

 

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