Awich『Open It Up』
『Open It Up』は英語・日本語を組み合わせ、暗喩・ダブルミーニングが散りばめた知的なリリックに加え、韻も固くFlowが多彩という恐ろしい曲です。
また、急に現れるストレートなエロスはAwichの多面性や幅の広さを伺えます。
この曲のラストに [ o – a ] の韻が畳みかけられています。
バースのほぼ全て、29個の韻を畳みかけています。
あーだ こーだ どーだ No だ
あんた 指導者気取った Joker you ain’t Yoda
Water さえも犯され放題
胡麻擂り誤魔化す公害
なんてこった まー濁った Soda
Po up 乾いた喉が Saok up
許可 とか 評価 とか Bogus
Hocus pocus 坊や ほら Focus
EVISBEATS『Taru wo shiru feat. Blumio』
退屈に悩む女性の悩みや嫉妬を含んだ感情を爆発させ韻を畳みかけています。
一緒ここから出ないのかも(アーア)
インスタグラムが世界の窓
フォロアー数たったの五十です
それに比べて昔の同級生のななちゃん、なんと今
可愛いモデル、かなりモテる(Woo-hoo)
ただ見惚れる、高いホテル泊まって(ハロー!あら!ウゥー)
私、ださい OL,庭で野菜取れる(ウウゥ)
以外自慢がない
誰も私のファンじゃない
ななちゃんと違うんだよ、なんか全部
彼女の元カレ、サッカー選手
「PEOPLE」収録
ZORN『かんおけ』
『かんおけ』は祖母の死について歌った曲で、ラストに韻を畳み掛け、「死」について深く考えさせられた後「生」へ繋がる鳥肌もんのリリックです。
アルバムでは次曲で「生」をテーマにした子どもの誕生を綴った「ゆりかご」が続くます。
一度きりの人生
一秒一秒死へ 日常に忍び音
霧も切り通して
未知の道を行け 生きろ嬉々として
日々の意味を知れ
木々の幹の威厳(いげん)
ミリの塵の人間(にんげん)
明日のことなんてSiriも知りもしねぇ
でもまだ未来は俺等の手の中
今動いた嫁のお腹
『かんおけ』のトラックはTHA BLUE HERBのO.N.O
THA BLUE HERBを「義務教育」というほど敬愛しているZORNは、BOSSのリリックをサンプリング しリスペクトを示しています。
▼『かんおけ』楽曲レビュー記事はこちら
▼ZORNの「韻」考察記事はこちら
「柴又日記」収録
NORIKIYO『Learn 2 Learn feat ZORN』
NORIKIYO『Learn 2 Learn』におけるZORNのバース
これほど同じ韻を連続で踏んでいるのに、文章に全く違和感がないという神業です。
サイゼリヤのトイレで葉巻を割いていた
やること なすこと最低さ
でも関係ない 反省会 なんてしない
だって今 だけが 大切だし
マンネリな 安定は つまんねーな
ナンセンスじゃん
ハイでいたいフライデーナイト
マイメン達とのありえないような体験談
一体あれから何年経つ
外見ばっかのダッセーやつ
ハーゲンダッツ カゴダッシュ
サイレンが鳴り鬼が迫り来る
タンマもバリアもできないドロケー
カレンダーめくったって戻れない
人生はボードゲーム
唾奇『SHIBUYAMELTDOWN』
『SHIBUYAMELTDOWN』は唾奇が客演曲では見せなかった思いっきりダークな面が現れている曲です。
そして曲中に様々なフロウを使いわけ、最新のトラップフロウも見せています。
多彩なフロウを使うなかで、ゆっくり乗せる部分で韻を畳みかけています。
ブラフは必要無い 金輪際 超いっぱいのxxxx
もう一回 飲みたい 正気じゃいられないって話
二度も同じ轍 踏まないって決めてたのになぁ
人生は遊びだ 全うに生きるなんてアホみたい
▼『SHIBUYAMELTDOWN』の「韻」考察記事はこちら
▼『SHIBUYAMELTDOWN』楽曲レビュー記事はこちら
「SHIBUYAMELTDOWN」収録 Link
DJ MASTERKEY『HIP HOP GENTLEMEN feat.MUMMYD/山田マン/BAMBOO』
山田マンはトラックに対して前乗りで、小気味よく韻を刻んで作るグルーヴが最高です。
そして韻を踏んでいる量もえげつないです。
起きろ上がれ今宵も笑え 騒げ調子どう?半端ねえ!
年を重ね増す年齢 温まる全身 詞作成しMeはラップ名人
そんな殺生な でも結構 血行良いから決行 今夜絶好調
焦点を定めて勝負 今日もペンを片手にトーク
どなたも夜中にド頭とお股にこびりつく よろこび狂う こざかしい
細かい事にはおかまい無し オラマジだし バリ焚き 書きガッチリ
▼『HIP HOP GENTLEMEN』の「韻」考察記事はこちら
餓鬼レンジャー『ちょっとだけバカ』
『ちょっとだけバカ』はR-指定、餓鬼レンジャーというトップレベルで韻の固い3人が自分のバカなエピソードを歌っていく曲です。
面白い話を進めながら、当然のように韻が固いです。
この曲のYOSHIのヴァースでは母音「a」で畳みかける激盛り上がりポイントがあります。
シャバダバ 酒場じゃ 朝から生
鼻高々 なかなか 頭が空
ハマジ、花輪、永沢、山田なキャラ
個性的な奴等が仲間だから
ピンチはチャンス 働かなきゃ
リスクを取るちょっとだけバカバカバカ
圧倒的閃き新たな技
未来は僕らの手の中 ざわざわざわ
「ハマジ」の1文字だけ母音「 a 」から外れてることについて、ツイッターで言及しています。
ハマジかミギワか迷ってんけど、男の子で統一しました。
結果、次の韻に繋がるクッションになったよー!しかし鋭いなぁ🤪 https://t.co/XkTzxrWZwI— YOSHI (@gaki44) 2019年4月16日
この場合の「たまちゃん」の「ん」が次の「花輪」の「は」に当たるな言葉が…
ってかマニアックな話やわwww
モコ!参加待ってるよー🤤 https://t.co/dTZBUCgYFI
— YOSHI (@gaki44) 2019年4月16日
▼『ちょっとだけバカ』の「韻」考察記事はこちら
▼R-指定の日本語ラップ紹介
SHINGO★西成『しったこっちゃない』
『しったこっちゃない』も同様に 母音「a」で畳みかけるバースがあります。
朝からバタバタ働き
なかなか休みが無いなか
わざわざ来たなら 騒がな踊らな
久々笑わな
新たな自分に気づかなあかんな
男は稼がな 盛大使わな
棚から牡丹餅 じゃなくて福沢
頭から嫌な思い出がさよなら
仲間がいたから ここから今から
それぞれ立場があるから
傍からガタガタ言うたら
またややこくなる
股から手が出て こんばんわ
覚えてるか?って知らんて誰
はなから揉める気な奴は帰れ
腹から声出せる奴は叫べ
何から何までいつもおおきに
胸の痛みと傷 元通りに
志人 / 心にいつも平和を抱いて ~No More War~
高波 [ a a a i ] で始まり、その後も美しい詩の世界観を崩さず殆どの言葉が母音 “a”で構成されています。
高波に抗い 赤紙に逆らいて雨ざらし
カナカナミンミン鳴くゼミ
さながら あなたは からがら生きている
はらはら涙がこぼれ落つるのは
命の儚さ からかな
たまたま出会った仲間は 宝さ ならばさ
まだまだ やらなきゃ ならない事が多々
我が刀あかさたなはまやらわをんの シャボンの鮮やかさかな
あたたかな やわらかな 裸な 眼差し
輝かしい ただただ あなたらし さは
様々さ しゃばだばだ
たかだか数十年間ならばさ
さらばだ言う前に学ばな
ICE BAHN『越冬』
もはや伝説的なFORKのライムです。
踏む韻のワードがリレーのように華麗に変化しています。
この氷河期じゃ 能書きじゃなく
ひねる脳がキー 要するに 猛吹雪を
毛布抜きで越えてく 肉弾戦でテクニック
出せん奴は脱落だ 辛くても立つ
ラクダみたいに 前進する
飾らない 依然シースルーで
見せてくのみ内面 まるで伸びない麺
あったかさパッケージ 音と言葉が合併し
ICE BAHN『クラウチングロケット』
ICE BAHNのもはや踏みすぎて訳がわからない曲です。
KITの韻を玉露が引き継いでいます。
要はすげえぶっ飛んだプレイの音楽性の儲かる絵に
本格的に おっ立つべき 調達現金 超出す元気
価値あるものに ないさ不条理 I am only 針刺すのみ
出したスゴみに涙グロッキー 沸き立つ興味
マジカルショウに アニマルより マジな動き 始まるとき
明日無防備な味なフローに 価値あるように案外ちゃんと
ちゃんとやると 何となくと ファンの数も 万と化すぞ
満載感動へ案内担当 関西関東 万歳三唱
猛烈にファンの レズビアンも 寝ずにちゃんと ネズミランド
行ける機関車 出る時間だ 乗るテクニシャンが出した
決議案は 別にアンタ 出すぎなんかねえ めげずに頑張れ
そこが出口なんだぜ
ICE BAHN / LOYALTY
”LOYALTY”の意味は忠義、誠実、忠実、忠誠です。
韻を踏むということにLOYALTYを果たしてきた3MCの真髄を見れる曲。
“チープな恥部も..“と BEAT奉行の太いビートに乗せてFORKが畳み掛ける部分は圧巻です。
姓はICE BAHN名はFORK
この看板背負って始まった勝負
アガりたい諸君全部大丈夫
お前の想定外に触れるMY JOB
チープな恥部も自分の一部と自負し
キープする皮膚感覚から
ニューバース 生み出すヒッヒッフー
片道切符先は未知数だが
己信じず誰を信じる
ブギービーツに落とすー筆
形は歪でも三者三様
互いの反応が判断材料
オリジナリティとリアリティ ありき
IBの旗に誓うロイヤリティ
ハスに構えるなら置き去りに
俺らはその名を刻みに行くぜ
「LEGACY」 Link
LITTLE『RAPが好き』
LITTLEの2ndアルバムに収録の『RAPが好き』はHOOKもなく、ひたすらLITTLEのRAPスキルを出す曲となっています。
その中で韻を畳みかける箇所があり、サンデーモーニングから14連発の韻が続きます。
ほれみろ それみろ ドレミも知らねぇ
オレにも 夢みせる RAP MUSIC
無我夢中に はまってたいの
一生涯 ラッパーでないと
サタデーナイトからサンデーモーニン
雨の日 風の日 いつも ビーツとはめ録り
タテノリ ヨコノリだって 三点倒立
みたいなバランス感でのり 完全勝利
何千通り ONE&ONLY
顔面凶器 反面教師 安全そうに
一見 見えても 危険 危険
▼『RAPが好き』の「韻」考察記事はこちら
LITTLE / ワンマンショウ
歌い出しの14文字と15文字の全踏みから圧巻です。
その後に続く “ドラマ ジオラマ..”の韻の連打も聴き心地最高です。
俺達のちいせぇ日常茶飯事
それなりの人生 一応な感じ
自称伝説の大器晩成
起承転結のない未完成
ドラマ ジオラマに育った
一花 一花の密かな 一波乱
ライツ カメラ アクション
監督 演出 脚本 主役も担当
I was born 生まれ変わり1バース
まるでフランダース くらい泣く
くらいまくる クライマックス
開幕 歌い出す舞台上
おれだけを照らせ 月と太陽
喜怒哀楽 奇想天外
駅の改札に商店街
探し求めて七転八倒
しながら 生きてんだぞ(let’s go)
「ワンマンショウ」収録
TABOO1『禁断の惑星 feat. 志人』
志人は独自の世界観を崩すことなく、訳が分からなくなるほどの韻を踏みます。
リリシズムとライミングをこれほどハイレベルで両立する志人はバケモノです。
機械任せで未来泣かせな博士の異常な愛情により
バイオ 倍増し大量のプルトニウムの雨が地上では降るという
連ねた理由など無いのに上辺だけで比べたりするから
地球は宇宙の中で孤立化する
取り憑かれて疲れたプラネタリウム
アイロニカルな 最後になるか
愛を抱くか君自身が太陽になるんだ
πの 解を担う パイオニア
先を見な
再処理は早いところ対処しないと防壁破り砲撃の恰好の標的
誤作動により放射能汚染
オーバードーズした六ヶ所
国家暴力 目下冒涜を説く
教科書じゃ消化不良だ坊や
▼『禁断の惑星』の「韻」考察記事はこちら
SUIKA with 降神 / タマキハル
SUIKAの5thアルバム『スイカ夜話』に収録されている『タマキハル』は15分におよぶドラマティックな超大作であり、2010年の発売当時は降神(志人、なのるなもない)が数年ぶりに揃ったことで話題を呼びました。
その世界観とストーリーが素晴らしいのですが、それを崩さず踏みまくる志人のライミングが驚異的です。
[ o a i ] の韻で畳み掛けた後、一文字足した [ o o a i ] でさらに畳み掛けています。大波 小波 後悔 用なし 本来 同じ
ソーラー見上げし兄弟
ものさし 夜空に 投げ打ち
この先 生涯 誇らし 友達言葉に 留まり 大人に 伴い
損ない どこかに 忘れた モノ達
異なりを認め事足りる事が
望まし 行いなのにもどかし
そう上手くはゆかぬが
「苦楽は歌うんだ」
とブラフマが 草むらを揺らす
プカプカ浮かぶ フワフワと膨らむ
複雑に渦巻くが狂わず 鈴なる
プラズマの ブラスバンド 降らすアース
グラグラ マグマ あぐら かく神楽
十中八九 崩さぬリズムで縮尺
拡大する宇宙は Who are you?
深く 繋ぐ 向かう プラス
無我夢中で貫く明日
うかうかしてる間にうやむやになるなら
ゆかぬか 悔やむな
この部分の踏み方は神業です。
[ u a u ] で立て続けに踏む部分、貫/く明日 [ u a u ] / [ u a u ] の踏む方なんて凄すぎます
「SUIKA夜話」
KOHH『Be Me』
また神頼み アホらしい
隣に 同じ道歩いた女、友達がいる
誇らしいし育ちとか関係ない
親父は違うけど同じ血が流れてる俺たちに近寄りたがるBitches
▼『Be Me』の「韻」考察記事はこちら
KennyDoes, ふぁんく, KZ, KBD, テークエム, KOPERU, peko, R-指定 / トラボルタカスタム ft. 鋼田テフロン
細かい韻が複雑に散りばめられている上に、体のパーツを使ったリリックという言葉遊びも含まれています。
また、”流行の波” “竜頭蛇尾”など長文で印象的な韻もあり完璧なバースです。
皆かじりついてる画面
その裏側には葛藤の日々
あぐらかいてる間に
寝首をかかれんようにget busy
こびりついてる耳
頭をよぎるは仲間の歌詞
揺るぎないこだわり
こちとらハナから百万馬力プレッシャースタディー(ei)
you can get it (ei)
流行の波
竜頭蛇尾 招かれざるUC’s coming
俺らはなるべくそのまんまで柔よく剛を制す発想
急所 脳天(ねら)うぞトラビスがトラボルタカス タム
ドラ息子ラップすればラスボス
「トラボルタカスタム」収録 Link
Creepy Nuts / 朝焼け
文章のほとんどが [ a a a e ] の言葉で成立しています。
甘ったれたハナたれが空っ風に吹かれ
からかった目で笑っていた世間に晒され
全て暴かれる
睫毛したたる雨垂れ 乾かせば
改めて現れた鏡の中の片割れがこう言う
「かまへん、やったれ」
サイプレス上野とロベルト吉野 / ヨコハマシカ feat. OZROSAURUS
細かい韻を散りばめたMACCHOの力強いバース。
地元を歌わせればMACCHOの右に出る者はいません。
それはどれも俺とダチの街の
暮らしのカタチや証の確かな
明日のワンシーン
有るも無いも有りも無しも
今も昔も借りも貸しもありえない 話も
どれも日常なじみ多い
鼻で喫ぎ分けるにおい
育ち土地柄にノリ
世代 時代ふまえて等身大
他元地元こわいチョロい悪いヤワい
何処にでもあるようなたわいもない Life
だったはずが輝いちゃう
こっからすべてが始まったんだ
THA BLUE HERB / ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO
月曜の夜いつものターミナル
血と汗の涙引き換えはいつものスタミナ
悟る知恵はやがて鎖帷子
知らぬ間に打ち込んだ青の楔は
決してバリア
ワクチンも通じないマラリア
キャリアを口にする前に技を学びな
言葉のもつメロディを使い、韻を強調せずとも緻密な配置で心地いいグルーヴを生み出しています。
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こんにちは