「WREP 第三研究室」において、ZEEBRAさん、MUMMY-Dさん、R-指定さんがCreepy Nuts『どっち』について語りました。
以下、ZEEBRA → Z MUMMY-D → M R-指定 → R
神々のイチャつき
Z:今夜は、当研究室に初のゲストプロフェッサーをお招きしております。
M:きたー!
Z:なんですかね、後輩呼んで超バズるみたいな超恥ずかしいと思わない俺たち?
M:いやいやいや(笑)
Z:本当R-指定さんありがとうございます。
最近とにかく引きがいいですよ、松永もR-指定も。
M:ガンガン話題になってるもんね。
Z:松永はさ、ウタさんの方でちょいちょい出てるじゃない。
M:あれはね、宇多丸一派なんですよ。
もうね、平気でなびきましたから。
Z:じゃあこっちのフェイク第三の方でR-指定は確保いたしましょう。
ということでね、まずはDの選んだ曲から研究していこうと思うんですけど。
M:はい、Creepy Nutsというグループがありまして、、その説明はいいか。
Z:そうですね(笑)
M:僕が選んだのは、最近この番組のためにずーとCreepy 聴いてて、もうずっと聴いてると好きになっちゃうよね。
Z:うーん!そうなんだよね。
M:好きなんだけど、前より好きになっちゃうんだけど。
すごいなあと思って感心してるんだけど、まあ分かりやすく『どっち』という曲を聴きたいと思います。
Z:こちらは『助演男優賞』に入ってるやつでございますね。
さっそく聴いてみたいと思います。
Creepy Nutsで『どっち』
Z:お聴き頂いたのは本日のゲストCreepy Nutsで『どっち』でした。
R-指定 In Da Building!!
R:よろしくお願いします。
Z:お忙しいところすみません。
R:とんでもないです、ずっと観ときたいです。
俺からしたら神々のイチャつきなんですよ。神話の中の話。
Z:なにをおっしゃいますか。
M:お忙しいんでしょ?
R:ふははは(笑)
Z:このDの虚ろな目なんだろな(笑)
M:オールナイトニッポンじゃないんだよーここは。
R:そうですね(笑)
Z:今日はだから、いつもいじって頂いてるかわりに、いじり倒そうかなあと。
R:ははは(笑)
M:でもね、冗談抜きでRと単行本で対談して、ラッパー同士のテクニックの話とかをしてたらすごい僕は楽しかった。
R:それでDさんが「たまにZeebraとも夜電話でテクニック論について話すよ」とか言ってたから、それを聞かせて下さいよって言ってたんですよ。
Z:これだよ!
R:そうなんですよ(笑)
M:来てんだよだからお前はここに!
R:ふははは(笑)
Z:電話でしてる話をせっかくだからおすそ分け。
R:ほんまそうっすよ。
ジブさんとDさんがテクニック論を語らずして、誰が語んねん?っていうお二人ですから。
M、Z:いやいやいや〜。
R:スキルのアップデートみたいなのをずっと、だから『マクガフィン』みたいなバースをDさんの世代の人に蹴られると若手は困るんですよ。
M:蹴られると(笑)
R:ジブさんの『64Bars』みたいなの困るんです。
Z:いやいやいやいや。
M:なんかすみませーん。
R:ははは(笑)
DJ ケーーオォーーリィーー!!イィィィンミッックス!!!
Z:ただあれですよ!今日はね、Rのラップテクをぐいぐいっと。
Mummy-Dさんから『どっち』についてなにか質問はありますか?
M:質問というかね、僕がこの曲を最初に聴いたシチュエーションはスポーツジムでね。
Z:スポーツジムでかかった?
M:自分のやつで聴いてて、ヘッドホンで。
で、ダンベルを落としそうになりました。
R、Z:ふはははは(笑)
Z:まあそうですよね。
R:その節はすみません(笑)
Z:この番組、鬼ニッチなんですよ、鬼狭い話をするんですよ。
で、この曲すげーなって思うのが、いきなり「ドンキ」と「ヴィレバン」
M:そう!そこなの!
まずね、この曲のすごいとこは、Rがよくやるネタ感の強い曲。
Z:はいはいはいはい(笑)
M:最終的なメッセージはどこにも馴染めないって話で、僕らで言ったら『グレイゾーン』と同じだと思うんだけど。
R:そうなんですよ。
M:いわゆるさ不良なラッパーみたいな、まあ「Thug(サグ)」だね。
サグ対オシャレな「サブカル」みたいな、そういうティピカル(典型的)な人達、その両方に馴染めないという。
それを「サグ」と「サブカル」って言わないで「ドンキ」と「ヴィレバン」って言ってて(笑)
Z:ははははは(笑)
M:お前ね、怒られるよっていう(笑)
R:ふははは(笑)
それは『グレイゾーン』でDさんが言ってはったから。
M:俺たちはそんなっ!店名とか出してないから!
R:ふふふ(笑)
先輩達がそういう表現してるから、俺もしたいと。
若手の使命として、先輩達が言ったことを今の感覚でとか、自分のフィルターを通してってなったら、大阪の堺市という田舎で育った俺からしたらそれを当てはめる。
「サグ」とか「サブカル」ない田舎やったから、なんとなくそれに通ずる物何やろな?
「ドンキ」と「ヴィレッジバンガード」やなと。
ドンキは地元にあって、アメ村の近くにいったらヴィレバンあるけど、どっちでもなかったんやな俺って。ってそんな感じで。
Z:まあ、ドンキに行くと「DJ ケーオーリー!!!」みたいな。
M:そこですよ。
R:「イン ミックス!!!!」
M、R、Z:「DJ ケーーオォーーリィーー!!イィィィンミッックス!!!」
R:ふははは(笑)
Z:それがバーっと並んでたりしますし、みんなもキラキラヘッドホンみたいな感じだったり。
R:そうですね。
Z:あとは一時期のサウスのジャケットみたいな。
R:はいはいはい。
Z:結構キラキラ、ギラギラした感じの一個でも多くモチーフ載せたもん勝ちみたいな。
R:あと単純にドンキに行ったら、下が青く光ってるデケエ車が。
M:あー。
Z:下青く光ってるやつな!
M:あるよねー。あれ運転してる人全然見えないのにね。
R:はははは(笑)
Z:あれって車停めてる時は光ってないわけでしょ?
駐車場で俺の車どこかなー?って探した時にあそこは別に光ってないんだよね。
R:あれで分かるわけじゃないです(笑)
地元の文化的にはドンキ寄りなんですよ、大阪の堺市ってとこは。
レゲエとかが盛んな、だんじり祭りとかもあるとこなんですけど。
そこでも不良になれたわけでもなく。
M:堺なのね。それ知らなかったな。
Z:じゃあ曲の話の方にグイッと入っていきたいと思うんですけど。
「ドンキ」と「ヴィレバン」って話は、早い段階から出てきてたんですか?
R:これは、実は10代ぐらいの時に温めてたラインなんですよ。
Z:ほぉー。
M:マジでー!
R:でも何処でも使い場所ないなと思ってて『たりないふたり』で松永とCreepy Nutsとしてデビューした時に、最初はサブカルで括られることが多かったんですよ。
Z:ふんふん。
R:『みんなちがって、みんないい。』とか変な角度からの曲が多かったから、「HIPHOPなのに不良じゃない」ってことでサブカル側にパッケージされることが多くて。
Z:うんうんうん。
R:「いや、違うねん俺ら!」っていうのも言っときたいってのがあって。
「どっちも好きやし、でもどっちでもないねん」みたいなのが俺と松永にはずっとあって。
多分今もそれはあるんですけど。
Z:はいはいはい。
R:それを一回言葉にして表明しときたいなってことで、「じゃあとっておきのライン俺あるわ!」ってことで松永にこれ出して。
M:それからトラック作ったの?
R:そうなんですよ。
M:あー!それはハマるわけだね。
俺ね、この曲すごいと思うのは、「サグ対サブカル」を「ドンキ対ヴィレバン」というメタファーで語っていこう。
で、サグはサグっぽい声で、サブカルはサブカルっぽい声でやっていこう。
ここまではギリギリ思いつくんだけど、、だからってやらないんだよね。
R、Z:ふははは(笑)
Z:思いつくけど(笑)
M:思いつくけど、「でもなぁ、こんなの可能かなー。」ってなるんだけど、これやりきってるじゃん最後まで。
R:ふふふ(笑)
M:すごいのは、1小節で不良の方、1小節でサブカルの方という風に、これをさ日本語で切り替えていくのって。
僕らの言葉むちゃくちゃ音節食うじゃないですか。
R:はい。
M:偉いなーっと思って。
Z:あーね!
M:その上で韻踏んだりってのは大変なスキルなの。
Z:これあれですよね、ある意味ラップ始めたうちって文字数とかあんま気になんないんっすよ。
みんなそこまで考えてないから。
R:そうなんですよ。
Z:だんだん俳句みたいに、文字数の中にどれだけ情報詰められるかとかに、はまっていくじゃないですか。
M:はまっていきますね〜。
そこが、制限された音節数の中でちゃんと面白い事をポンポン言ってく。
で、これ肝なんですけど、ずっーと逆のこと言ってるんだけど途中で
「ダンジョン見てます」
「ダンジョン見てます」
って同じ事言うんだよ両方が(笑)
Z:はははは(笑)
M:ふざけんじゃねーよ!面白いよコノヤロー!みたいな。
R:うれしー。
これマジやったんすよ、むちゃくちゃヤンキーがいっぱいおるクラブの現場行っても「ダンジョン見てます!」って言われるし。
オシャレそうなサブカルの人も「観ましたよ、ダンジョン」みたいなこと言ってくるから、そこはどっちもなんやって。
それに対して松永が「俺は?」ってイライラしてたから、松永の気持ちも書いとたろかなってことで、ガヤで松永が「俺も観てるよ!」って言ってるんですよね。
Z:なるほどね(笑)
M:バカなグループですね(笑)
もう本当ね、情報量が並みじゃないから。
Z:ほんとそうですね。
さっき言ってた変わり身する感じ、これはUSのHIPHOPで言うと、エミネムとマーシャルの自分の中での2キャラね。
M:あー!そうだね、オルター・エゴ(Alter Ego)ってやつね。
Z:そういうやつですね。
あれはあれで上手いし、DMXも昔そういうのやってたよね。
M:あ、そうなんだ。
Z:そういうのって自分の中で消化してる感じ?
R:あります、あります。
エミネムに当然影響を受けてるんです。
で、やっぱり日本語ラップの人に一番影響を受けたんで、エミネムに影響を受けた般若さんに影響を受けた部分やと思います。
Z:ほー!
M:へー。
R:般若さんも1st、2ndの時とかは特に一人二役とか。
Z:あるね。
R:落語みたいに上下振り分けてってのを『やっちゃった』の中でやってたりして。
それを最初中学生の時聴いてオモロー!って思ったんすけど。
R:それの元を辿ればエミネムとマーシャルのオルターエゴの使い分けやと思うんですよね。
やっぱ、人格を一つの曲の中で変えてもいいんやってことはRHYMESTERにも学びましたよね。
Z:あー!
R:『グッド・オールド・デイズ』とか、あれで色んな人格を演じ分けるというか。
それで結構、影響を受けてるはずっすね。
M:そんな曲もありましたかねー。
R:はははは(笑)
むちゃくちゃムカつくんだよこれが!
M:もうちょっと聞きたいことがありましてね、頭でね「ぷぷぷぷっぷーぷーぷーぷー」みたなさ、すんごいバカな、あるじゃん?
R:はいはいはい(笑)
M:あれどうやって歌ってんの?
R:あれね、松永が鼻で歌ってるんすよ。
M:ふははははははは(笑)
Z:あ、そうなんだ(笑)
R:俺も「何この変な音?これどっからサンプリングした?」
「これ俺だね」って言ってて。
Z:ちょっと待って、家でビート作ってる段階でそれ入れてるんだ!
R:そうです。
結構Creepy Nutsのビートは松永が自分で声ネタ入れてたりするんですよ。
M:ちょっと聴ける?(笑)
ムカつくんだこれが。
R:これ松永の鼻歌(笑)
M:ふははははははははは(笑)
R:ふははは(笑)どうやってんのかな?鼻押さえながらかな(笑)
M:ふははははははははは(笑)
Z:もおーー、バカですね(笑)
っていうことはさ、Rは例の「ドンキ」と「ヴィレバン」のリリックが入ってるビート出来たよ!ってこれ渡されてさ「ぷぷぷぷっぷーぷーぷーぷー」って入ってた?
R:そうです!「最高ー最高!こうゆうの!こうゆうの!」って。
M:ふははは(笑)
むちゃくちゃムカつくんだよこれが!
Z:確かにね(笑)
M:腹立つわー(笑)
Z:もう散々俺のこといじり倒した後にこれ歌われたら、どうしようと思うからね!
R:はははは(笑)
なかなかね、持って生まれた格好良さみたいなのが無いタイプの2人だから、身近にあるティッシュの箱でも空きペットボトルでもなんでも使って武器にするという。
Z:うんうんうん。
あのー、でもさ音の出方が「プー!」って鳴るなんだっけ?
M:草笛?
Z:草笛だっけ、グランドマスターフラッシュじゃないけどさ、
M:「パーララパッパッパラー」
Z:そう!
M:カズーっていう楽器だね。
Z:そうそうそう。
あれ咥えながらメロディ言うとその音がビューって、それみたいな音だよね。
M:そう!だから草笛となカズー使ってんのかなあって思ったんだけど。
R:松永もそれを意識してるか分からないですけど、どうやったらアレっぽい音になるかってのをアイツもアイツなりに研究して色々やってんやろなっていう。
Z:うんうん。
M:まあその話はもういいかな。
R:はははは(笑)
パート分けをすごく細かく
Z:ちなみにね、結構行ったり来たりするわりにバースも結構長いというか、それなりにあるじゃないですか。
R:はい。
Z:これは書いてて、どんな感じで全体の尺感は決めてるの?
どんどんどんどん出来ちゃった感じ?
R:いや、やっぱり僕は書き方としてオチから決めたりするタイプなんで。
Z:さすが関西の方ですねー。やりますねー。
M:いやですねー。
R:ふははは(笑)
ドンキとヴィレバン分けて言おうって決めて、一番最初に思い浮かんだのは、分けてどっかで一緒のこと言おうと。
それこそさっき言ってた「ダンジョンの観てます」とか絶対入れようと決めてて。
M:ふははは(笑)
R:だからこれまでは絶対離しといた方がいいなってことでドンキとヴィレバンの性質みたいなのを出していこうという感じでやったんです。
Z:ふんふんふん。
R:だから1バースはほんまに入門編みたいな感じで、2バース目に結構、核心に迫っていくというか。
Z:うん。
R:クラブでワイニーとか、LDH、泣き歌コンピとかドンキっぽいワードで。
M:やめて下さいよ(笑)
ほんと性格悪いよね(笑)
Z:はははは(笑)
R:音のハマり的にすごい気持ちいいし、俺どちらも好きなんですから!
Z:はいはいはい(笑)
まあ、我々普段から韻フェチなところがあるじゃないですか。
R:はい。
Z:韻フェチの観点からいくと、まったく正反対の2つで踏むっていうのは、それはそれで面白いってのが。
R:ありますね!
Z:リリック書くときってオチ考える、「ダンジョ見てます」を入れるのを考える、次はどこを考えるの?
R:やっぱり頭なんかなー。
でも結局、入れたいワードは置いといてHook作るってパターンもありますね。
1番曲が映えるような、破壊力増すHook何かなあって考えますね。
Z:うんうんうん。
R:でもこの曲の場合は、最初の「ドン・キホーテにもヴィレッジバンガードにも」が最初にあったワードなんで、俺はやっぱケツと歌い出しが一番時間かかるっすね。
Z:うーん。
R:ケツにどう着地するための入り口を設けるかっていうので。
Z:はいはいはい。
R:でもほんま、入り口すぎてもあかんし、途中すぎてもあかんし。
これは結構、丁寧にはいりました。
Z:ふんふんふん。
R:だから、「なあ一体俺らどっち」って問いかけて、これはこういう曲ですよって入って。
「これじゃにっちもさっちもいかない…」までいってから、ここでいよいよドンキとヴィレバンの差異みたいなのを交互に出すパートに入るぞと。
だからこれは結構、パート分けをすごく細かく。
Z:あー!そういうことなんですね。
「これじゃにっちもさっちもいかない…」までが初期設定?
R:そう初期設定。世界観はこういうことです!みたいな。
Z:はいはいはい。
R:この時の俺は説明過多というか、丁寧に作ってるはずですね。
急に声2つに使い分けられてもびっくりすると思うんで。
Z:はいはいはい。
M:そうだー。いやぁ、すごいね。綿密に考えられてるというか。
多分今後、この番組にこれだけ論理的な助教授こないよね。
R:あははは(笑)
Z:控え室でビール飲んで終わっちゃうみたいな人達来そうだな(笑)
M:「バイブスっすね」みたいな。
Z:あははは(笑)
だからこれからはさ、バイブスピーポーも俺達がどう捌いてね(笑)
M:そう、こっちが説明しないといけないから。
Z:そこは頑張らないといけないとこですけども。
<書き起こしおわり>
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