THA BLUE HERBのBOSS THE MCに影響を受けているような語り口のラップと、現在のZORNのスタイルを彷彿とさせる韻の畳み掛けがミックスされているようなこの曲。
ZORNのスタイル変遷が分かる貴重な名曲で、感情を乗せて韻をほとんど踏まない部分は、今ではあまり見られないスタイルです。
駅前であの子とすれ違った。
あの子は俺に気づかずに行ってしまった。
いつまで経っても今も俺は目を開けたまま夢見がちだが、
ナンパみたく声掛ける、チャンスとのすれ違いざま。
誰も皆口を揃え一握りだと言いやがる、
いいやまず一人きりだとしても俺はやる。
朝六時、またろくに眠れずに家を出る。
太陽は輝いてるが開かない目で働いて、
労働者は今日もまた汗をかき金を稼ぐ。
羽も伸ばせず別に誰も評価せず。
やみくもに働く、だが何も変わらず、
それでも明日ってやつはやってくる必ず。
立ち止まる暇はなく、まだ行けるとあがいてる。
灰色の曇り空に晴れ間を探してる。
薄汚ぇ作業着、靴にはねたコーヒー、
そんな俺を横目で見る遠慮ねぇ世間の目。
ラッパーだなんて言えば鼻で笑われるか、
ヒップホップなんて言えばただ冷やかされるか。
煮詰まる日々、沈まずに 昼休み詩を書溜め、
いつか来るその時に静かに想いを走らせ、
暗闇をかき分け、情熱をたぎらせ、
諦めは無しだぜ 死ぬまでに間に合え。
既に始まってる、なら後は終わるだけ。
歯車が悲鳴を上げゼンマイが止まるまで。
働くのが生きるためなら生きるのは何のため?
それを探すため、いや模範の答えはいらない。
気付けずに生きてきた俺もついに見付ける。
真っ黒なフードの影、未来をにらみつける。
見返すため 鍛えるだけ、あの場所に立てるまで、
その時を想像し奮えて眠れ。
初めてのステージを忘れない、俺は15才、
O-JEEに誘われた六本木スパイラル。
どっかから持ってきたレコードのインスト、
ap前のバーミヤンで書いたリリックを乗せ。
盛り上がっていたのは身内だけだ、
あの日から今も変わらずに思ってる、 いつになれば。
時に見失っては檻で凍えていた、
数えきれない程の夜、一人越えてきた。
稲穂は実る程に頭が下がる、
俺は一部一番手のショーケースから学ぶ。
10分で1万のノルマを払い続けた。
何人もやめていったが俺はまだ立ってるぜ。
夜空が暗いからこそ星は見える。
街灯が光っていても昼間なら気付かない。
何も見えなかった俺をヒップホップに導いた
クソッタレな人生にも礼を言いたく なる。
夜十時クラブに向かう雨の地下鉄、
一番端の席、背をもたれ腰掛ける。
人生は一度きり、どうせなら懸けに出る。
崖っぷちに追い詰めて俺は俺を試してる。
報われない努力、救われな孤独、
でも俺にとってヒップホップは叶わない恋じゃない。
失ったものすら取り戻せるかもしれない。
その時を想像し奮えて眠れ。
あと一歩のところで届かないことがよくある。
掴みかけた瞬間、裏切られた気分さ。
筋書きが無になり 振り出しに戻っても、
俺が夢を捨てなければ夢は俺を捨てない。
成功が努力よりも先なのは辞書だけだ、
保証もないものに一生を賭けな。
それでもその扉が開くとは限らない。
だが夢も見れないような男には先はない。
お前等に言ってやる、大人達に言ってやる、
駅前ですれ違った元カノにも言ってやる。
鼻で笑ってみろ、これこそがラッパー。
冷やかしてみろよ、これがヒップホップだ。
大金や権力や地位や名声じゃない、
あの子が振り向いた時、俺は成功者だ。
賭けるものがないんです、人生でいいですか?
その時を想像し奮えて眠れ。
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詰めが甘いなぁ